この状況を打開する新たな動きも浮上している。「ある国立大学は訴訟予算もノウハウもないため、自費で訴訟を引き受ける専門家や専門業者を募集して委託し、海外で特許侵害訴訟を試みようとしている」と都内の特許事務所所長は明かす。この大学は訴訟費用を用意せずとも、勝訴すれば賠償額から訴訟費用や代理で訴訟した専門業者のフィー(手数料)を差し引いた額が得られるだけでなく、大学の知財重視の姿勢を対外的に示すことができ、特許の価値を明確に知ることもできる。
別の国立大学の知財担当者は「日本企業も訴えるのか。大学には基礎研究と教育という役割が先にあるはず。研究継続を邪魔されないための出願でもある」と従来と変わらない姿勢を示す。代表的な大学の意見だが12年度に日本の大学が出願した特許件数は国内約6500件、海外約2600件にのぼる。産業競争力強化が求められる現在、各大学は特許を出願する真の意味を問い直す好機ではないだろうか。(知財情報&戦略システム 中岡浩)