うな丼なくなる?
幼生の餌の判明は、完全養殖実現への大きな一歩ではある。しかし、まだ解決すべき課題はある。それは大規模かつ高密度に幼生を育てることができる装置の開発だ。
柳の葉のような形をした幼生は、実は海水より比重が軽い。このため水槽内で常に水流がないと浮かび上がり、水面に浮いた葉のように、上面が干からびて死んでしまう。
少量を飼育する研究段階の水槽なら簡単な装置で水流の維持が可能だが、実用化レベルの大型の水槽は設備コストとの戦いになる。また、低価格で供給するには飼育の密度を上げ、高効率化も図らなくてはならない。
幼生の不漁の原因は今のところ不明だが、ウナギの減少傾向は確実で、環境省は絶滅の恐れがある野生生物のリスト「レッドリスト」に記載する方向で検討している。
今年は見送られたが、絶滅の恐れがある野生動植物の国際取引を規制するワシントン条約で、米国が新たな規制対象にウナギを加えようとする動きもあった。
「早く完全養殖を実現しないと、うな丼が食べられなくなるかもしれない」と塚本教授。日本人が親しんできた食文化を絶やさないためにも、研究の進展が待たれる。