完全養殖は卵から成魚までを人工的に育て、次世代の卵を繰り返し産ませることをいう。クロマグロでは実用化しているが、ウナギはまだ研究段階。自然界での幼生の餌が未解明だったからだ。現在はアブラツノザメの卵などを暫定的に与えているが、1カ月で9割が死んでしまうという。
マリンスノー分析へ
塚本教授らと海洋研究開発機構の研究チームは、海の中で小さな生物が大きな生物に捕食される食物連鎖の段階に応じて、生物の体のアミノ酸に含まれる窒素同位体の比率が変化することに着目した。
窒素同位体の比率は生物によって固有の値があり、食物連鎖の上位にいくと数値がどう変わるかも決まっている。そこでマリアナ海溝で採取した幼生の同位体比率から、食物連鎖を1段階下げた餌の数値を逆算し、合致するものを探した。
その結果、餌は動植物プランクトンの糞(ふん)や死骸だったことが判明。直径0・01~1ミリの微細な有機物で、海中を雪のように舞い降りることから「マリンスノー」と呼ばれる。
ただ、これが餌だと分かっても、いちいち現場海域まで行って採取して与えるのでは膨大なコストがかかってしまう。塚本教授は「マリンスノーを構成する成分を詳細に分析して、最適かつ実用的な餌を模索していくことが次の課題だ」と話す。