ゴーン前会長を特別背任容疑で再逮捕 私的投資の損失18億円を日産に付け替えた疑い
日産自動車の前会長、カルロス・ゴーン被告(64)=金融商品取引法違反罪で起訴=が、平成20年のリーマンショックで生じた私的な投資による損失約18億5千万円を日産に付け替えた疑いが強まったとして、東京地検特捜部は21日、会社法の特別背任容疑で再逮捕した。ゴーン容疑者は報酬過少記載事件で10日に再逮捕され、東京地裁が20日に勾留延長を認めない決定をしたため、近く保釈される可能性が高まっていた。今回の再逮捕で勾留は長期化する見通し。
再逮捕容疑は日産のCEO(最高経営責任者)だった20年10月、自身の資産管理会社と銀行との間で通貨のデリバティブ(金融派生商品)取引を締結し、リーマンショックの影響で生じた約18億5千万円の損失を日産に付け替えたなどとしている。
会社法の特別背任罪は、企業の取締役など会社経営に重要な役割を果たす人物が、自分や第三者の利益のためか、または会社に損害を与える目的で、任務に背いて会社に損害を与えた際に成立する。罰則は10年以下の懲役または1千万円以下の罰金。刑法の背任罪(5年以下の懲役または50万円以下の罰金)より重い。
ゴーン容疑者は側近で前代表取締役のグレゴリー・ケリー被告(62)=同=と共謀し、平成27~29年度のゴーン容疑者の報酬を約42億円過少に有価証券報告書に記載したとして金商法違反容疑で今月10日に再逮捕された。22~26年度分については計約48億円過少に記載したとして同法違反罪で起訴されている。
特捜部は過少記載事件の再逮捕後に勾留延長を請求したが、地裁が20日に却下。特捜部による異議申し立てである準抗告も退け、ゴーン容疑者らは近く保釈される可能性が高まっていた。
ゴーン容疑者は役員報酬の個別開示が義務化された22年から、実際の年間報酬20億円前後のうち10億円前後を有価証券報告書に記載し、残りをコンサルティング料などの名目で退任後に受け取ることを計画したとされる。ゴーン容疑者らはいずれも「確定しておらず記載義務はない」と容疑を否認している。
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