障害者雇用、理念どこへ 「数でしか見られてない」水増しに関係者落胆
国の第三者検証委員会が22日、調査報告書で指摘した障害者雇用の水増しに関する手口は、公的機関の多くが雇用の対象範囲を恣意(しい)的に解釈するなど、「法の理念に対する意識の低さ」(検証委)を露呈するものだった。障害者団体からは怒りや落胆の声が続出し、中央省庁の担当者は反省の弁に終始。法定雇用率の達成に向けて政府は対策を示したが、再発防止に向けた態勢作りが急務となる。
「『やっぱりそうだったのか』という印象。落胆している」
社会福祉法人「日本盲人会連合」総合相談室長で自身も盲人の工藤正一(しょういち)さんは、検証委の報告を受けて憤りをあらわにした。
障害者を対象とした統一選考試験を新たに導入し、平成31年末までに障害者約4千人を採用する方針を示した国に対し、「計画倒れに終わらせてほしくない。質の確保も含め、障害者雇用が担保されているかについては第三者機関がチェックしていく体制を早急に構築してほしい」と訴えた。
NPO法人「障害者の職場参加をすすめる会」事務局長の山下浩志さんも「障害者が数でしか見られていない。雇用実態や働く環境にも目を向け、障害のある人とない人がともに働くノウハウを示して」と注文を付けた。
一方、障害者団体でつくるNPO法人「DPI日本会議」副議長の西村正樹さんは「再発防止の検討に当たり、国ではどのような議論が行われてきたのか。障害者が働く上でどのようなことが必要になるのかといった、具体的内容まで踏み込んだ改善策を示してほしかった」。障害者の社会参加を目指す活動を行う一般社団法人「ゼンコロ」会長の中村敏彦さんは「現行制度では、『障害者雇用はコスト』という前提のもとで制度設計されている」と指摘。その上で「雇用する側が障害者の就労能力をしっかりと評価し、労働の対価として報酬を支払えるように仕組みを整えることが大切だ」と語った。
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