所有者説明進まず…交換工事遅れも KYB免震不正、長期化か
免震・制振装置データ改竄(かいざん)問題を起こしたKYBは納入先の建物所有者への説明など対応を急ぐ方針だ。国の基準や顧客と決めた基準に合わない不正な装置のほか、不適合品か不明な装置も交換する方針だが、長期間かかる見通し。住民や建物利用者の不安解消には時間がかかりそうだ。
KYBと子会社は、地震の揺れを抑えるオイルダンパーと呼ばれる装置の性能検査でデータを書き換えていた。19日に対象の物件987件のうち国や自治体の庁舎70件を公表。所有者らの了解が得られた建物名を公表したが、住居や病院などへの説明は進んでおらず、公表は全体の1割に満たない。
対象物件には、書き換え前のデータが基準外だったもののほか、基準に収まっていたのかが不明なものも含まれる。物件の3割近くはマンションなどの住居で、KYBには住民らから電話が殺到してパンク状態となった。早急に情報提供体制を改善するという。
KYBは今後、基準への適合が不明な装置の調査や顧客への説明を継続するとともに、不適合が確認された装置の交換に着手する。対象は不明分を含め免震が904件、制振は83件。津市の工場でダンパーの生産能力を月産100本から500本程度に引き上げる。ただ、一つの物件に複数のダンパーが使われているケースが多く、必要数を満たすのは容易でない。
実際の工事では、免震装置が建物の地下の空間に設置されていることが多く、取り換えが比較的容易とされる一方、制振装置は内装で隠れていて、交換する際に壁をはがす場合もある。建物の所有者らとの協議や建築業界の人手不足もあって、工事完了が遅れる可能性がある。
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