「忍者の里」伊賀市長が発見、伊賀衆と甲賀衆の協調示す史料

 
戦国時代に伊賀衆と甲賀衆が密接な関係にあったことを示す「甲賀郡奉公惣・伊賀奉公惣連署起請文」。三重県伊賀市が古書店から購入し、市指定文化財となった=同市上野丸之内の上野図書館

 戦国時代に織田信長に侵攻された「忍者の里」で、伊賀衆と甲賀衆が密接な関係にあったことを示す文書が見つかり、三重県伊賀市は1日、市文化財に指定した。郷土史料収集家でもある岡本栄市長が、なじみの古書店で売り出されていたのを偶然発見。専門家の助言も踏まえ、「中世の自治組織を知る上で大変貴重な史料」として市費で購入していた。

 指定されたのは、巻物の状態で保管されてきた9通の「伊賀国上柘植村并近江国和田(いがのくにかみつげむらならびにおうみのくにくわた)・五反田村山論(ごたんだむらさんろん)関係文書」。中でも貴重なのが、天正元(1573)年に地侍の集団の「伊賀惣国一揆」と「甲賀郡中惣」が土地の利用権について取り決めた「甲賀郡奉公惣・伊賀奉公惣連署起請文(きしょうもん)」だ。

 市文化財課によると、大名の権力が及ばない地域で、地侍による自治組織が機能していたことを示す一級史料だという。織田信長が伊賀惣国一揆を攻めた天正伊賀の乱(1578~1581年)直前の時期にあたり、伊賀衆と甲賀衆が密接な関係にあったことを示している。

 岡本市長は平成28年12月、20代の頃からのつきあいという古書店「思文閣(しぶんかく)」(京都市)から送られてきた目録に同文書があるのを発見した。同時期に史料の存在を知った福井大学の長谷川裕子准教授(日本中世史)から、市側に「購入した方がよい」と提案されたことも踏まえ、市費での購入を決めたという。

 長谷川准教授は「所在不明にならないようにするには、公的機関で保存すべきだと考えた。伊賀に里帰りし、文化財に指定されたことをうれしく思う」と話している。