発見された南方熊楠の菌類図36点公開 水彩スケッチ、英文で特徴 上野の国立科学博物館

 
新たに確認された菌類図譜(国立科学博物館所蔵)

 自然史から民俗学までさまざまな領域で独創的な研究を重ねた和歌山県出身の博物学者、南方熊楠(1867~1941年)が、ライフワークとして取り組んだ「菌類図譜」の一部が新たに確認され、上野の国立科学博物館の展覧会「南方熊楠-100年早かった智の人-」で計36点が初公開されている。来年3月4日まで。

 同博物館は、熊楠が採集し、水彩で詳しくスケッチ、英文で特徴も記した3千種以上の菌類の図譜を以前から所蔵。付いていた通し番号から、全体で菌類約4800種分の図譜があると推定していたところ、近年、関係者が保管していた図譜の筆跡や記述スタイルから新たに熊楠の図譜約870種分を確認した。

 まだ欠落はあるが、図譜の多くが補完されたとみられる。今回の展覧会での公開は、その一部。

 新たに確認された図譜はヒダナシタケのグループの記述が多く、カラフルなイラスト、英文の説明とともに、採集したものの一部が標本として貼り付けられていた。

 熊楠は、ロンドンから帰国した明治33年から亡くなる前年の昭和15年頃まで、暮らしていた和歌山県などで菌類の採集を続け、図譜を作成した。

 同博物館菌類・藻類研究グループ長の細矢剛さんは「新種が含まれる可能性もゼロではないだろう。自然史の世界では、これだけ多岐にわたるコレクションを持っていた収集家として現在でも代表的な存在だ」と語る。