復興の大義名分、被災地食い物に 除染事業、相次ぐ不正に「当たり前」の声も

 

 東京電力福島第1原発事故の除染事業をめぐり、準大手ゼネコン「安藤ハザマ」が領収書を改(かい)竄(ざん)して除染費を不正取得した疑惑。同社側は改竄を認め、不正取得についても調査している。多額の公費が投じられた東日本大震災の復興事業では、過去にも不正が相次いで発覚しており、同社の調査結果次第では、復興という大義名分を隠れみのに被災地を“食い物”にしたとのそしりは免れない。

 至るところに「フレコンバッグ」と呼ばれる黒い大きな袋の山がある。福島県の被災地の光景だ。中には除染で取り除いた表土や草木が入っている。

 「宿泊費を綿密に計算する余裕なんかない。結果的に実際より多く請求したこともある」。除染事業に携わった、ある下請け企業の幹部が打ち明ける。安藤ハザマ側が下請けに指示し、除染作業員の宿泊費を改竄した領収書を作成させて、行政側に提出していた事実の背景には、こうした事情がある。

 除染はそれほど高度な技術力は必要とされない一方、多額の公費が投入されるため、うまみが大きいとされる。早期復興のため、通常は最終精算の対象とされない宿泊費についても特例として最終精算できるようになっていたが、今回の疑惑ではこの仕組みが悪用されたとみられている。

 除染には3兆円超の予算が計上された。福島県浪江町の除染では平成25年以降、安藤ハザマが筆頭の共同企業体(JV)が受注。ほかの福島県内の自治体、国発注の除染にもJVを組むなどして参加していた。

 震災復興事業をめぐっては、これまでも不正がたびたび発覚。損傷した東北地方の高速道路の復旧工事では、道路舗装会社が談合を繰り返していた。関係者の一人は「震災復興に寄与する工事で、緊急性が高く(談合は)やむを得ない」と語った。早期復興のためには談合が必要悪だ、という思いが透けて見える。

 今年3月には、環境省の出先機関「福島環境再生事務所」の職員が収賄容疑で逮捕される事件もあった。

 除染事業でも不正は相次ぎ、福島市では5月、山林除染をした業者が工事単価の高い竹林で作業したと偽装した問題が発覚した。ある業者の幹部は「不正と言われれば不正だが、暗黙の了解だった」と話す。

 「不正は当たり前」(業者幹部)。もしそうだとしたら、発注者の国や自治体のチェック態勢も根底から問われることになりそうだ。