渡部俊也・東京大学教授に聞く(中)

生かせ!知財ビジネス
データの権利処理などに関して「知財を扱うスキルと同じ」と説く渡部俊也教授
データの権利処理などに関して「知財を扱うスキルと同じ」と説く渡部俊也教授

 ■データ所管は知財部門で

 第4次産業革命へ向けて、ビジネスモデル構築の際に最も重要なリソースの一つに知財がある。“データ”の重要性について知財戦略・政策研究で知られる渡部俊也・東京大学政策ビジョン研究センター教授に聞いた。

 --IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能の時代に入った今、企業が全社戦略を進める上で、知財部門はなぜ重要になるのか

 「昨年、キュレーションビジネス(まとめサイト)の運営手法のことで大騒ぎになった。ブロガーたちが書いていた記事が不用意に扱われていたことが大きい。コンテンツは著作権の問題だが、この事件はAI技術を持つ企業が事業を運営するためにデータを集め、AIに活用することでサービスを提供することに似ている」

 --確かにコンテンツやデータがあってのビジネスだ

 「過去に炎上した企業の事例を見ると、コンテンツやデータのホルダーの視点で事業を企画し、ホルダーへしっかりとした提案ができていないとうまくいかないのは明らか。コンテンツやデータの所有、アクセス、利活用の権利を原始的に持つ企業や人たちの感覚を踏まえて、各権利の処理がしっかりとでき、それらをビジネスモデルにどう組み込むか、というロジックが必要だ。実は、特許などの知財を扱うスキルと同じだ」

 --コンテンツやデータも知財部門の仕事になる

 「やってほしい。例えば日本企業の知財部門ではもともと技術ノウハウ、営業秘密を所管していなかったが、過去5年ほどの間に多くの企業で管理するようになった。それは、いろいろな国々へ進出して事業展開をしていくときに特許出願だけでは事業を守れないので、やり方を見直そうとなったからだ。同じようにできるはず。特にデータの契約や保護については、知財の観点で知財部門にやってほしい。それはデータを活用する側だけでなく提供する側の双方に必要なことだ」

 --データを扱うための制度は整備できているのか

 「生データは保護の対象になりにくい。データセットは新しい枠組みでの保護が検討され、恐らく不正競争防止法における営業秘密管理についての改正が行われる。学習済みモデルの特許保護やデータを使って生まれたコンテンツの著作権問題なども検討されている」(知財情報&戦略システム 中岡浩)