三菱、宇宙事業に意欲 海外受注を最優先 H2A成功、技術力アピール

 
ロケットからひまわり9号の分離に成功し、喜ぶ打ち上げ関係者=2日午後、鹿児島県の種子島宇宙センター

 打ち上げ成功は、H2Aロケットの製造と打ち上げを担った三菱重工業や、衛星本体を製造した三菱電機にとって、技術力を世界にアピールする格好の機会となる。両社は、海外からの受注拡大を宇宙事業拡大の最優先課題と位置付ける。現状では欧米に後れをとっているが、政府と歩調を合わせつつ巻き返しを図る構えだ。

 世界最高級の信頼性

 「世界市場でシェアを伸ばしていきたい」。打ち上げ後に種子島宇宙センターで会見した三菱重工の二村幸基執行役員フェローは、宇宙事業の拡大に意欲をみせた。

 今回の打ち上げで、H2Aは25回連続、別のロケットのH2Bを含めると30回連続で成功したことになる。H2A単独の成功率は96.8%と、信頼性の目安となる95%を上回り、世界最高水準に達している。

 H2Aは米ベンチャー、スペースXの「ファルコン9」や欧州の「アリアン5」がライバルだ。打ち上げ費用はファルコン9の60億~70億円に対し、100億円程度と差があるが、天候以外の要因に左右されず、予定通り打ち上げられるのが強み。12年に韓国の衛星を打ち上げて以来、カナダとアラブ首長国連邦(UAE)からも受注し、少しずつ実績を積み上げている。中でも昨年11月に打ち上げたカナダの衛星は、海外民間企業から受注した初の案件となった。

 2020年にはJAXAが開発し、三菱重工も参画する新型ロケット「H3」の初号機打ち上げが控える。H3は、打ち上げ費用をH2Aの半分程度に抑えるなどして競争力を高める方針だ。

 売上高5割アップへ

 三菱重工は、大型客船の工事遅れで巨額の損失を出し、開発中の旅客機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」でも度重なる納入延期を余儀なくされている。難局続きの同社にとって技術の信頼性を示した打ち上げ成功は、「汚名返上」にもつながりそうだ。

 一方、海外受注の拡大は三菱電機も力を入れており、08年以降、シンガポールやトルコ、カタールから受注している。

 17年には、約30億円をかけて衛星を製造する鎌倉製作所相模工場(相模原市)を拡張する予定。宇宙事業の売上高を、20年度に現状の約5割増となる1500億円に増やす計画を掲げる。

 国内の宇宙産業の規模は約3000億円と、5兆円を超える米国と大きな開きがあるうえ、官需が大半を占める。スペースXをはじめとした民間参入も相次ぎ、競争は激化しつつある。こうしたなか、政府は宇宙基本計画などを通じ、日本企業の海外市場開拓を後押しする構えで、今後はオールジャパンの取り組みも問われる。(井田通人)