脱臭除菌で激突…パナソニックVSシャープ 鉄道や自動車へ販売合戦

2019.9.9 06:40

 パナソニックとシャープが、鉄道会社や自動車メーカー向けに除菌や脱臭効果をうたった微粒子イオンの発生装置販売でしのぎを削っている。近年は健康志向の高まりを背景に移動空間の快適性を求める需要が増えているといい、電機大手のライバル同士による販売合戦がますます加熱しそうだ。(林佳代子)

電車にプレミアムな空気

 大阪・淀屋橋駅-京都・出町柳駅間を運行する京阪電気鉄道の有料特別車両「プレミアムカー」。3列のリクライニングシートでゆったりとくつろげることを売りにした車内では8月から、パナソニックなどが開発した微粒子イオン「ナノイーX」の発生装置が設置され始めた。

 ナノイーXは、同社が展開してきた「ナノイー」を改良してイオンの発生量を10倍に増やし、除菌や脱臭の効果を高めた技術。平成28年から自社のエアコンなどに搭載してきたが、外部への納入はこれが初めてだ。

 プレミアムカーにはすでにナノイーの発生装置が納入されていたものの、京阪電鉄は「目に見えない部分での快適性を追求したい」(担当者)とし、全10車両でより高性能なナノイーXへの置き換えを決めた。来年度に運行を始める新型のプレミアムカーの車両にも導入する計画だ。

日産、トヨタ、ジャガー、ななつ星にも

 空気清浄機などに搭載されるイオン発生技術は、空調世界最大手のダイキン工業なども開発している。だが、鉄道会社などへの外販は、パナソニックの「ナノイー」とシャープの「プラズマクラスター」の“2強”態勢が続く。

 先陣を切ったのはシャープだ。12年にプラズマクラスターを搭載した空気清浄機を発売すると、間もなく他社展開をスタート。当初はホテルやエレベーターなど住空間をターゲットにしていたが、その後は移動空間にも販路を広げた。

 鉄道車両では21年にJR東日本の山形新幹線「つばさ」に初めて採用されたのを皮切りに、南海電気鉄道の特急「サザン」、大阪市営地下鉄(現・大阪メトロ)の御堂筋線などでも導入。自動車分野でも、日産自動車の「リーフ」やホンダ「フリード」など、国内6メーカーの80車種以上に採用されている。

 これに対し、自社製品の展開に集中してきたパナソニックもナノイーの売り込みを強化。鉄道分野でJR九州の観光寝台列車「ななつ星in九州」やJR東の山手線「E235系」、東京急行電鉄「新型2020系」などに採用されたほか、自動車分野ではトヨタ自動車で36車種(レクサスブランド含む)、スズキ、ジャガーにも採用されている。

タイ鉄道に試験導入

 現在、国内で激戦を繰り広げる両社が力を入れるのがグローバル展開だ。シャープは今年6月にタイ・バンコクの高架鉄道「BTS(スカイトレイン)」とプラズマクラスターの導入に関する覚書を締結し、すでに実証段階に入っている。

 シャープの担当者は「国内外ともに移動空間向けの市場はまだまだ拡大の余地がある。将来的にはバスや飛行機などにも納入するチャンスが出てくるかもしれない」と話す。プラズマクラスターの世界の累計販売台数は昨年10月に8千万台を突破しており、令和3年度の1億台突破を目指してさらなる攻勢をかける構えだ。

 一方、パナソニックは3年度までにナノイーとナノイーXの発生装置の年間販売台数を現在より3割多い1千万台へ伸ばす計画を掲げている。当面はナノイーからナノイーXへの置き換え需要を拾いつつ、シャープのシェアの切り崩しを図っていく方針だ。

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