2019.4.9 10:00
□田辺三菱製薬ワクチン室長・多田俊文さんに聞く
--世界初として開発を進めているタバコ属の葉を使ってインフルエンザワクチンを製造する植物由来のVLP(ウイルス様(よう)粒子)ワクチンの仕組みは
「既存のワクチンは鶏卵でウイルスを培養し不活化して作られるが、新手法はタバコ属の葉にインフルエンザVLPを作るための遺伝子情報を含む液体を染み込ませ、1週間ほど葉を育てる過程でワクチンのもとになるVLPを培養し、刈り取った葉から抽出・精製してワクチンを作る。過去の実績では5~6週間で製造できる」
--既存のワクチンより優れている点は
「VLPワクチンは異物をたたく免疫反応を起こすが、ウイルスそのものではないので、体内でインフルエンザウイルスが増殖するリスクがない。さらに生成が早い植物由来なので、既存の鶏卵由来に比べて製造期間が短縮できる。鶏卵由来のインフルエンザワクチンは製造におよそ半年くらいかかるといわれており、パンデミック(爆発的な流行)で臨機応変に対応できない」
--開発の経緯、現状は
「2013年に植物由来のVLPワクチンの製造技術を持つカナダのメディカゴ社に60%出資したのが始まり。今はカナダを含む欧米を中心に臨床試験を実施している」
--製品化に向けてのスケジュールは
「米国、カナダの政府当局と申請に向けた準備協議を慎重に行っているところなので、協議結果を受けてスケジュール感が見通せるが、カナダ・ケベック市の工場建設計画も進めており、23~24年のシーズンに稼働できるよう考えている。同工場が稼働すれば、当社のVLPワクチンが米国市場の約1割を占める規模感になる」
--日本国内での展開は
「現時点ではスケジュール感も含めこれから検討するというところだが、まずは北米での足元を固めたい」
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【プロフィル】多田俊文
ただ・としふみ 米ボストン大院経営学修士課程修了。2005年、田辺製薬に入社。タナベ・インドネシア経営企画室長、シンガポール駐在員事務所長、MTファーマシンガポール社長などを経て、17年に海外事業推進部長に就任。18年から現職。福岡県出身。