2015.11.29 07:12
総合オンラインストアのAmazon.co.jp(アマゾン)が事業者向けに提供しているサービスで、アマゾンのアカウントを持つユーザーが、アマゾン以外のサイトで簡単に商品を購入できるようにする仕組みを利用するサイトが、これまでに約200となった。5月に「劇団四季」のチケット販売や、飲食物の出前をオンラインで受け付ける「出前館」で始めたもの。ショッピング利用者の利便性が高まり、注文の成約率向上につながると分かって、参加サイトを大きく増やした形だ。
「世界で最も人通りの多い商店街に参加できるのは光栄」。5月から「Amazonログイン&ペイメント」でのチケット販売を始めた際に、「劇団四季」運営会社の四季社長を務める吉田智誉樹氏は、アマゾンユーザーという大きな市場に向けて“店”を持てる意義をこう語った。
アマゾンが持つユーザー認証や決済の仕組みを使って、オンライン販売を行えるようにする仕組みが「Amazonログイン&ペイメント」。日本では5月から提供がスタートし、これまでに、食品・雑貨、メンズ・レディースファッション、インテリア雑貨、アンティーク家具など多彩な業界が導入した。9月1日に、ネットショップの構築や運用をサポートするパートナー企業で、「Amazonログイン&ペイメント」に関する機能の提供を始めたことも、導入サイトの拡大を後押しした。
導入によってどのような効果があったのか。アマゾンジャパンディレクター、セラーサービス事業本部事業本部長の星健一氏は、コンパクトな財布のオンライン販売を行っている「SUPER CLASSIC」を例に挙げ、「Amazonログイン&ペイメント」の注文成約率は、クレジットカードや代金引換といった他の支払い方法に比べ、1・64倍になっていることを明らかにした。
「通常では18個あった入力項目が、アマゾンのアカウントでログインすれば2個で済む」と星事業本部長。カート画面から購入完了までの成約率は、PCからの場合34%増、スマートフォンでは48%増となり、画面が小さく入力に手間がかかるスマホ経由のオンラインショッピングに、こうした入力の手間を省く「Amazonログイン&ペイメント」の効果が出ていることも示された。
Amazon.comバイスプレジデントで、ペイメントサービスを率いるパトリック・ゴティエ氏は、ユーザー名やパスワードを忘れて、サイトの利用をやめてしまったユーザーが92%に達していること、SNSサービスのIDで買い物をすると、プライバシーに問題が起こるのではと不安に思っているユーザーが40%に及ぶことを、調査会社のデータを挙げて紹介した。その上で「Amazonログイン&ペイメント」なら、ひとつのアカウントでログインできて、しっかりとしたセキュリティに守られながら決済を行えるメリットがあることを強調した。
アマゾン自体や、マーケットプレイスに参加している事業者では提供していないような独自のサービスを、それぞれのECサイトで展開している事業者が、「Amazonログイン&ペイメント」に参加することで、アマゾンユーザーはより豊富なショッピングメニューを楽しめるようになる。これによりユーザーの利便性が高まり、オンラインショッピングの利用者が増えることを示して、さらに多くの事業者に参加を呼びかけていく。
出店者向けのサービス強化として、アマゾンではこのほか、商品を販売している事業者に、運営のための資金を融資する「Amazonレンディング」で「リファイナンス(借換)型ローン」の提供を10月から開始した。完済時まで次の融資を利用できなかったものを、1回目の返済が行われた後は、借り換える形で限度額まで新たに融資を受けられるようにした。商品が売れていても、融資が受けられないため仕入れができず、勝機を逃していたような事態を避けられる。従来は3カ月、6カ月だった融資期間に、新たに12カ月のものも追加した。
出店者が販売窓口を広げられるようにする施策、取扱商品の拡充につなげられる施策を採り入れることによって、アマゾンが企業理念としている「地球上で最も豊富な品揃え」と「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」も満たしていこうとしている。