「軽」販売消耗戦で利益圧迫 スズキ、ホンダ…年末に新型車が相次いだ理由

2014.12.23 07:01

 スズキが22日発売した軽自動車「アルト」の全面改良モデルはガソリン1リットル当たりの燃費性能が37.0キロに達し、トヨタ自動車のハイブリッド車(HV)「アクア」と並び世界トップの低燃費を実現した。

 スズキは2014年の暦年販売で8年ぶりに軽シェア首位を奪還する見通しだが、新型アルトで正月商戦を押さえ、9年ぶりの年度首位にも王手をかける狙いがある。新車販売の4割を占める軽市場はスズキの攻勢で一層競争が激しくなりそうだ。

 新型アルトは徹底した軽量化で車体重量を従来モデル比60キロ削減し、燃費性能でガソリン車トップだったダイハツ工業「ミライース」(35.2キロ)を追い抜いた。スズキの鈴木修会長兼社長は同日、東京都で開いた発表会で「アルトは今回で8代目。原点に戻り、庶民感覚で実用重視の車にした」と胸を張った。

 スズキは今年、オフロードでも使える走行性能とかわいらしいデザインを融合させた「ハスラー」が大ヒット。消費税増税後に失速したライバルのダイハツを尻目に好調を続け、1~11月の累計販売は約5300台差で首位に立った。

 一方、他社も黙ってはいない。ホンダは22日、クーペをイメージしたデザイン重視の新型軽「N-BOX SLASH(スラッシュ)」を発売。峯川尚専務執行役員は同日の発表会で、「軽にもっと面白く自由なスタイルを提案したい」とアピールした。

 ダイハツも11月にハスラー対抗の新型車「ウェイク」を、12月に全面改良した「ムーヴ」を発売してスズキに対抗する。

 年末に新型車の発売が相次いだ背景には「年末年始にテレビCMをたくさん流し、正月商戦を勝ち抜きたい」(スズキ関係者)との思惑がある。15年4月から軽自動車税が1.5倍に増税されることもあり、駆け込み需要が見込まれる年度末は軽メーカーにとって勝負時だ。

 だが、スズキの攻勢で販売競争が激化した結果、自動車大手幹部は「利益が圧迫され、もうけが出しにくくなってきた」と漏らす。

 安売り競争に加え、販売台数を確保するためディーラーが自社でナンバー登録して転売する「未使用車」も増加。中古車大手のガリバーインターナショナルは15年1月1日、常時200台の未使用車を展示した日本最大級の専門店を福島県郡山市に開設する予定だ。

 本業の収益性の高さを示す売上高営業利益率は9月中間決算時点で好調なスズキでも前年同期比0.3ポイント減の6.3%、ダイハツは3.4ポイント減の4.4%と下落しており、各社の消耗戦が浮き彫りとなっている。

 14年の軽販売は消費税増税後の需要減退をはね返し2年連続で過去最高を更新する見込みだが、来年以降は「もうけが少ない軽への関心が薄れるのではないか」(大手幹部)との声も出始めている。

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