2014.5.22 05:00
■利用者伸ばせず赤字経営続き
▼コースタルオアシス松任 地元自治体や金融機関などが出資する第三セクター、コースタルオアシス松任(石川県白山市)は4月4日、金沢地裁から破産手続きの開始決定を受けた。北陸自動車道の徳光パーキングエリアに隣接した複合観光施設「まっとう車遊館」を運営していた。負債総額は約38億2000万円。
日本海の魚介類や伝統工芸品などを販売する物産館と、銘菓や雑貨店、飲食店などが軒を並べる食祭館、アミューズメント施設などが入る遊祭館で構成。しかしテナント募集が難航し、開業が1997年の消費税増税に重なったこともあり、当初から赤字経営が続いていた。開業後にテナントの新規契約を獲得する一方で既存テナントの撤退もあり、入居率は約75%で推移していた。
2001年3月期にはゼネコンが債権放棄した建設代金未払い分を債務免除益として計上し、約4億円の黒字となった。それ以外は赤字が続き、07年3月期に累積赤字は5億円を突破。経営陣が関わる企業の破綻も表面化して信用不安が加速していた。
その後、高速道路料金の値下げによる交通量の増加で来場者が増えた時期もあったが、業績の抜本的な改善はできなかった。12年には一部金融機関から競売を申し立てられ、13年8月に金沢市の企業に売却。その後は債務の整理を進めていた。
▼パルコール嬬恋 ゴルフ場などを運営するパルコール嬬恋(群馬県嬬恋村)は3月31日、東京地裁に民事再生法の適用を申請し、保全・監督命令を受けた。負債総額は約27億円。
嬬恋村と東京のリゾート会社が出資して1988年に設立した第三セクター、嬬恋紀州鉄道リゾートから会社分割で設立。初期投資が250億円にのぼるゴルフ場(18ホール)とスキー場、ホテル(135室)を引き継ぎ、スキー場の一部ゲレンデは運営を嬬恋村から受託していた。
分割前の売上高は約16億円に達していたが、長引く消費低迷で利用者が減り、その後は約8億円で推移。東日本大震災後はさらに客足が遠のき、2013年3月期の売上高は約7億円に落ち込んでいた。震災の影響が一段落した後は団体利用客が増えたものの、もともと前身企業の債務の多くを引き継いでおり、業績の伸び悩みで大幅な債務超過に陥り、自力再建を断念した。(東京商工リサーチ)
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【会社概要】コースタルオアシス松任(4月上旬現在)
▽本社=石川県白山市
▽設立=1995年10月
▽資本金=3億1650万円
▽事業内容=観光施設運営
▽負債総額=約38億2000万円
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【会社概要】パルコール嬬恋(3月下旬現在)
▽本社=群馬県嬬恋村
▽設立=2005年3月
▽従業員=27人
▽資本金=1000万円
▽事業内容=リゾート施設運営
▽負債総額=約27億円
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〈チェックポイント〉
第三セクター方式で事業を展開したコースタルオアシス松任は、地元の名産品をそろえた複合観光施設の運営にあたったが、思惑通りにテナントを集められず、テナントの撤退も相次いだ。店を入れるだけではなく施設の魅力を高めるためにどうあるべきかが、どこまで熟考され、経営に反映されていたのだろうか。
パルコール嬬恋は第三セクターから会社分割で発足。初期投資の負担が比較的少なく平穏な事業展開が期待されていた。しかし、個人消費の低迷による売り上げ減少で経営体力を消耗。東日本大震災も響いて自助努力は限界になった。当初の事業計画は楽観的ではなかったか。(東京商工リサーチ取締役情報本部長 友田信男)