石油元売り、生き残り戦略模索 供給過剰解消…鍵握る外資の動向

2014.1.20 06:00

 国内の石油元売り各社が再編に向けて動き出した。4位の東燃ゼネラル石油は2月4日付で、三井物産子会社で7位の三井石油を買収する。国の規制で元売り各社は原油処理能力の削減を進めてきたが、供給過剰感はまだ解消されていない。今回の買収をきっかけに再編機運が高まりそうだ。

 共倒れに危機感

 「買収は目的ではなく、手段。単独よりも三井石油と組んだ方が、競争力を高められると判断した」

 東燃の武藤潤社長は1月8日、フジサンケイビジネスアイの取材にこう力説した。

 単純合計で売上高の規模は3兆円を超え、3位のコスモ石油と肩を並べる。

 昨年12月の記者会見で、武藤社長は「三井石油の給油所1カ所当たりのガソリン販売量は業界平均の約2倍もあり、販売力を強化できる」と意気込んだ。原油や原材料調達などでも高い相乗効果を見込む。

 業界再編は、2010年に新日本石油と新日鉱ホールディングスが統合して最大手のJXホールディングス(HD)が誕生して以来。この間、さまざまな再編話が浮かんでは消えてきた。

 その背景には「民族系」と呼ばれる国内資本のJXHDと出光興産、「外資系」の東燃、昭和シェル石油(ともに海外石油メジャー資本が一部出資)、コスモ石油(中東産油国資本が一部出資)の大手5社が、市場が縮小する中でも何とかすみ分けてこれたという事情がある。

 だが、元売り各社でつくる石油連盟によると、ガソリンや灯油など石油製品の需要は1999年度の2億4600万キロリットルから12年度は1億9800万キロリットルに激減。今後も減少は続く見通しだ。

 09年に施行された国の「エネルギー供給構造高度化法」により、元売り各社は原油処理能力の削減を進めてきた。「このまま放任していれば、元売り各社は共倒れになる」(経済産業省資源エネルギー庁の幹部)可能性があったからだ。その高度化法対応の期限まであと2カ月余り。各社は製油所を縮小し、対応をほぼ済ませた。

 ただ、数年後には再び供給過剰に直面するのは明らか。各社は再編も含む新たな生き残り戦略を模索し始めていた。

 今回の買収を含め、鍵を握るのが外資の動向だ。東燃は、筆頭株主の米エクソンモービルが世界的に石油精製販売事業を縮小したあおりを受け、12年にエクソンから日本事業を買収。エクソンの出資比率は5割から2割に低下した。さらに今回の買収で、三井物産がエクソン保有の東燃株を一部取得するため、エクソンの東燃への出資比率は約12%に下がる。

 武藤社長は「独自に意思決定できるようになったのは大きい」とするが、出資比率の低下でエクソンの影響力が薄れ、独立経営を余儀なくされた側面も否めない。

 枠組み超えて発展も

 昭和シェルに出資する英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルも日本市場からの足抜けを探っているとされ、外資系を中心に再編が加速する可能性は高い。

 一方、主力の石油以外でも、東燃など4社が液化石油ガス(LPG)事業の統合検討を昨年末に発表。石油コンビナートでは企業の枠を超えた「協業」も進む。コンビナートには多数の石油化学工場も隣接し、業界の枠組みを超えた再編に発展するかもしれない。(藤原章裕)

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