2013.10.21 06:15
マツダは、主力車「アクセラ」を全面改良し、11月21日に発売する。トヨタ自動車から技術供与を受けたマツダ初のハイブリッド車(HV)を設定した。同社独自の低燃費技術「スカイアクティブ」との組み合わせで、燃費性能はガソリン1リットル当たり30.8キロと、排気量2000cc以上のHVで最高となった。
「世の中にあるハイブリッドは、われわれの考え方と相いれない」
アクセラの開発責任者を務めた猿渡健一郎商品本部主査はこう強調する。現在のHVは電子制御でブレーキをかけたり加速を行ったりするため、ハイブリッド特有の“癖”があるというのが理由だ。
振動抑制やブレーキに特徴
今回、蓄電池やモーターの出力を制御するインバーターなどはトヨタのハイブリッド技術を使っているが、エンジンとの協調制御の領域などではマツダらしさを出すことに注力した。猿渡主査は「始動・停止時の振動抑制やブレーキにマツダらしい特徴が出せた」と胸を張る。
では、HVでのマツダらしさとは何か。
猿渡主査は「運転していても、HVとは思わない走り。ガソリン車と何ら変わらない走行ができること」を挙げる。
つまり、特徴がないことが特徴というわけだ。このため、アクセルペダルを踏み込んだ際の加速感を緻密(ちみつ)に検証し、ドライバーの意図に沿って伸びやかに加速していくというガソリン車と同じ性能を追求した。
エンジン音についても、車速が上がっているのに、音の変化がないという違和感を解消したという。「ハイブリッドではないという人もいるだろうが、われわれはこれがいいと思う。考え方を理解してくれる人に乗ってほしい」(猿渡主査)と強調する。
こうした特徴が出せたのは、HV専用に開発した高効率のガソリンエンジンの効果も大きい。排気の一部を吸気側に戻す「クールドEGR」と呼ばれる仕組みを採用。圧縮比はHVトップレベルの14.0を実現した。
「少しの燃料でパワーが出る。高効率のエンジンに仕上がった」(広報部)というわけだ。また、排気の熱エネルギーを回収し、エンジンの暖機時間を短縮してエンジン停止の機会を拡大させ、燃費の向上に役立てた。
現在、国内HV市場は、トヨタの「プリウス」「アクア」の独壇場で、ホンダが9月発売の新型「フィット」でトヨタの牙城を崩そうとしている。加えて、富士重工業の「スバルXVハイブリッド」も受注が好調で、生産が追いつかない状況にあるなどHV市場は脚光を浴びている。
「運転が楽しいクルマ」
こうした中で、マツダはアクセラのHVの価格を、ガソリン車の171万1500円からに対し、237万3000円からと高く設定したが、国内販売の約4割がHVとなることを想定している。
小飼雅道社長は「国内Cセグメント(中型車)市場は、ハイブリッドが5割を占めている。われわれも(HVが)必要と判断した」と狙いを説明する。
一方で、HV市場でトヨタやホンダとの真っ向勝負については否定する。「マツダがターゲットとする客のニーズに応えるのがわれわれの仕事」(小飼社長)と、他社とは一線を画して販売する計画だ。
猿渡主査も「アクセラはハイブリッドといっても、運転するのが楽しいクルマ。クルマの総合的な価値を提供したい」と語っている。(飯田耕司)