「場当たり的」先を読めないパナソニック これからどう戦うの?

2012.11.22 08:00

 トヨタ自動車とパナソニックは日本を代表する製造業であり、電池事業をはじめ、さまざまな形で友好的な関係を築いてきた。業種は違うが、モノづくりに対する真摯(しんし)な姿勢はきわめて似ている。

 その両社の業績は今、明暗がくっきりと分かれている。米国でのリコール(回収・無償修理)問題や東日本大震災、タイの大洪水…。ここ数年、難題が相次いだトヨタだが、実は過去10年間で最終赤字に陥ったのは、リーマン・ショックでつまずいた2009年3月期の1度しかない。

 一方、パナソニックは10年間のうち4度も最終赤字があり、前期は7721億円の巨額赤字を計上。今期も7650億円の最終赤字見通しで、今期を含む直近5年間の赤字総額は2兆円以上におよぶ。

 業種の違いは当然、業績に大いに関係している。家電はデジタル技術でコモディティ(汎用)化が進んだため、値崩れが激しく、メーカーの収益を悪化させてきた。

 これに対し、自動車はアナログ的な要素もあり、すべてが汎用化されることはない。現時点では価格の急落はあり得ないといえる。ただ、両社の明暗はそれだけの差なのか。

 パナソニックは今後、何で戦うのか。そこが見えてこない。確かに最先端商品が1年足らずで汎用化する家電業界で「次の主軸」を見きわめるのは容易ではない。しかし、将来を見据えた戦略商品がなければ、収益を安定的に確保し、成長を維持することは難しい。

 トヨタはエコカーの本命がEV(電気自動車)とみられる中でもHV(ハイブリッド車)にこだわり、商品群の充実のほか、ライバル企業との連携にも意欲的に動くなど、独自路線にぶれはない。しかも「エコカーは全方位で取り組む」と公言し、EVや燃料電池車の開発も進めるなど、実にしたたかだ。

 一方、パナソニックは戦略商品に位置付けたプラズマパネルテレビの販売が低迷し、過剰な設備投資が収益を圧迫させた。

 次世代テレビは「有機EL」が有力で、パナソニックも1月に米国で開催された家電見本市「CES」で突然参入を表明したが、参考出品もなく、関係者は「場当たり的だ」と失笑した。同分野で一歩も二歩も先を行く韓国サムスン電子を追い抜くのは難しいだろう。

 10月末には、販売不振を理由に今春に再参入した欧州携帯電話事業の撤退を表明。スピード経営を訴えたが、それでは再参入を決断したときの経営判断はどうなるのか。三洋電機の買収は効果があったのか。斜め読みすれば、「場当たり的」な経営に思えてくる。

 2年連続で7500億円以上という前代未聞の赤字を垂れ流すこととなり、当面は緊縮経営となるのはやむを得ない。ただ、「先を読めない」経営が業績不振の一因であることを自覚しなければ、“復活”の二文字は見えてこない。(産経新聞大阪経済部次長 島田耕)

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