2012.4.16 05:00
節約志向や若者のアルコール離れの逆風が吹く中、大手居酒屋チェーンが新たなサービスを導入し需要の掘り起こしを急いでいる。営業時間外の昼間の個室の貸し出しや、ノンアルコール飲料による宴会といった新企画で、主婦や夜勤前の利用客が増えるなど、いまのところ滑り出しは順調だ。
コロワイド(横浜市西区)は傘下の「甘太郎」や「北の味紀行と地酒 北海道」で、ランチ終了から夕方の営業開始までの間、個室を会議室やセミナー会場として貸し出し、終了後にそのまま宴会を行うプラン「ちょこっとセミナー」を1月から始めた。10人前後のグループでの利用が多く好評といい、暇だった“空白”時間帯の稼働率の向上につなげているという。
同社は主に女性をターゲットにしたノンアルコールビールやソフトドリンク飲み放題の“ノンアル宴会”も昨秋から導入。夜勤を控えた消防士が利用するなど「意外なニーズも発掘できた」(担当者)と、新サービスに手応えを感じている。
また、モンテローザ(東京都武蔵野市)は4月1日から、傘下の「魚民」「白木屋」「笑笑」など全国約1040店でおつまみのテークアウトサービスを始めた。
枝豆や鶏の空揚げ、フライドポテトなど定番のおつまみを円形トレーに詰めた1890円の「わいわいセット」(2~3人前)など、人数分ごとに3種類のセットを提供。東京で桜が見頃となった先週には、花見用にセットを複数購入する近隣の会社員らの需要で、「魚民」八重洲中央口駅前店などで売り上げが伸びた。
同社は3月から、コンビニエンスストア大手のファミリーマートのインターネットショッピングサイトで居酒屋メニューの通信販売も開始、「家飲み」需要の増加を視野にサービスの多様化を急いでいる。
一方、大手チェーンでは居酒屋からの業態転換を図る動きも出ている。三光マーケティングフーズ(東京都豊島区)は牛丼チェーン「東京チカラめし」の出店を加速、ワタミは一部店舗をファミリーレストラン「饗の屋」に切り替える予定だ。
調査会社の富士経済によると、今年の国内居酒屋市場の規模は11年比1.4%減の2兆165億円と見込まれている。07年から続く市場の縮小で業界全体が正念場を迎える中、顧客の獲得競争はますます激しくなりそうだ。(金谷かおり)