パナ、シャープ、ソニー“赤字地獄” 売り切り型ビジネスの限界

2012.3.20 00:30

 パナソニック7800億円、シャープ2900億円、ソニー2200億円-。大手電機3社が平成24年3月期に巨額の最終赤字に転落する。惨憺(さんたん)たるありさまである。

 そして3社ともそろってトップが交代し、新体制での再起を図る。理由はどうあれ、現社長の“引責辞任”の色は消せない。

 これに対し、日立製作所2800億円、三菱電機1千億円、東芝650億円-。こちらの大手3社は黒字の見込みで、堅調さが目立つ。赤字3社とは対照的だ。日立にいたっては過去最高利益である。

 この違いは何なのか。赤字3社がいわゆる弱電系であるのに対し、黒字3社は重電系で、社会インフラを事業として有している。明暗が分かれた理由の1つはここにありそうである。

 平たく言えば、弱電系の製品は“売り切り型”である。売ってしまえば、それで終わりだ。一方、インフラ系の製品は販売後、「メンテナンス」というビジネスがくっついてくる。つまり、売った後も稼げるのだ。

 パナソニック、シャープなど3社の赤字地獄の元凶は「テレビ」である。“家電の王様”としてメーカーの顔であり、手放すことができない製品だが、それが足を引っ張った。言うまでもなく、テレビは“売り切り型”である。

 どこのオフィスにもあるコピーやファクシミリなどの機能を備えたデジタル複合機。これには売った後にトナーというビジネスがくっついてくる。だから機械はリースでもいい。トナーでもうかるのだ。

 こういうものがテレビにはない。新製品を開発し、莫大(ばくだい)な投資をして生産体制を構築し、さてこれからとなったときに待っているのは、それ以上のスピードで変わってしまった環境だ。

 韓国や台湾メーカーがすさまじい勢いで追い上げ、手に追えない速さで販売価格が低下。その結果が売るほどに赤字が増えるという地獄である。そして残ったのは不要になった工場と巨額の投資負担…。

 人件費や円高など、トータルな生産コストを考えると、もはや日本ではこの“売り切り型”のビジネスは終焉(しゅうえん)にさしかかっているのかもしれない。

 赤字3社は新たな事業を育成するのが急務だが、いかに「メンテナンス」を取り込めるビジネスを開拓するのか。そこに注目したい。(佐久間史信)

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