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値上げで強まる節約志向は危険な罠か 「デフレ丼」が示す経済成長への逆風 (1/2ページ)

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部

 世界的な資源価格の高騰が経済活動のコストを押し上げる中、企業が値上げによる買い控えを避けようと懸命になっている。最近は食品を中心に価格上昇の動きが相次いでいるが、同時に消費者の節約志向も強まっているもよう。新型コロナウイルス禍で生活が大きく変化した消費者には「お金を使わなくても楽しめる」との意識も浸透しているようで、企業にとって節約志向の打破は至難の業だ。値上げが消費を下押しすれば経済成長の逆風となり、政府が分配政策を進める余地も縮小するだけに、消費者の「脱節約」に向けた意識転換への期待も出ている。

 吉野家に最安値の丼登場

 「こっそりデフレ丼の供給が始まっていた」。今月に入り、牛丼チェーン大手の吉野家が試験投入した商品がインターネット上で静かな話題を呼んでいる。並盛り税込み363円の「鶏丼(とりどん)」。11月8日から12月7日の1カ月間、東京都内の10店舗だけで販売されている特別メニューだ。

 鶏丼は薄めにスライスした鶏肉と玉ねぎ、タケノコをオイスターソースで味付けした商品。現行の丼メニューとしては豚丼(387円)を下回る最安値の価格設定となる。吉野家の広報担当者は「お買い求めやすい価格を意識した」と話す。

 実は吉野家は10月29日に、牛丼の並盛りを387円から426円へと値上げしたばかり。輸入している米国産牛肉の価格高騰などで安値の維持が難しくなったことが理由だ。値上げの一方で、新たな安値商品の提供も探る手法は、消費者の節約志向に気を配った戦略といえそうだ。

値上げは苦渋の決断

 コスト上昇圧力に苦しむのは吉野家だけではなく、他の業界でも値上げの動きが相次ぐ。ワクチン普及に伴う経済活動再開は原油高の引き金となり、燃料価格高などを通じて物流費が上昇。北米産小麦の作柄悪化や新型コロナ禍が引き起こした東南アジアでの労働力不足などもあいまって、パンや食用油などさまざまな食品の値上げにつながっている。為替相場が円安基調にあることも輸入価格を引き上げる要因だ。

 値上げが消費者心理を冷やすリスクを警戒し、各社は値上げが苦渋の決断だったとアピールして、消費者の理解を求めるのに懸命だ。家庭用インスタントコーヒーなどを来年1月から値上げすると発表したネスレ日本は、コーヒー生豆価格の上昇や円安などの値上げ圧力の強さを強調し、「やむを得ず価格を改定することにした」と説明。キッコーマンはしょうゆと豆乳の希望小売価格を来年2月16日から引き上げると発表した際、原材料費や物流費の上昇分を「自社でのコスト削減努力だけでは吸収できない状況」とした。

 ただ、消費者の不安はすでに高まっているようだ。市場調査などを手掛けるソフトブレーン・フィールドが今月18日に発表した全国の働く主婦層を対象にした意識調査によると、回答者の71%が食品の値上げによって「節約意識が高まっている」と回答。具体的な消費行動の変化を尋ねる質問では、特売やクーポンの活用、価格が安いメーカーの商品を探すなどして支出を押さえるなどのコメントがあったという。

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