鉄道事業者の間で、大容量データを遅延なくやり取りできる第5世代(5G)移動通信システム導入に向けた取り組みが活発化している。高速列車内でオンライン会議に参加できるといった旅客サービスや、遠隔制御で鉄道事業を効率化する自動運転分野での活用が期待されるからだ。各社は鉄道事業を大きく進化させる可能性を秘めた先端技術に力を注ぐ。
新幹線内での快適なオンライン会議、動画中継の視聴…。5Gが可能にするサービスは多い。JR東日本では数年前から高速鉄道における5Gの実用可能性を確認する実証実験を進めてきた。昨年末には時速360キロで走行する新幹線試験電車「ALFA-X」内と地上の双方向で4Kと8Kの高精細画像を伝送する実験を行い、国内最高速度での通信に成功。「車内サービスに活用できることを確認した」(生田剛一・技術イノベーション推進本部ICT推進プロジェクト副課長)。
ただ、実用化には5Gアンテナをきめ細かく設置するなどの設備充実が欠かせない。5Gは電波が線路周辺の遮蔽物などの影響を受けやすく、鉄道で利用すると通信状況が不安定になるといった課題がある。「駅周辺など難しい場所は、(アンテナ設置にたけた)携帯電話事業者に協力してもらい整備を急ぐ必要がある」(同)という。
一方、今夏には同社が保有する千手(せんじゅ)発電所(新潟県十日町市)の発電機などの取り換え工事で5Gを使った“リモート監督”の実証実験を実施した。建設現場の容量の大きな画像データなどをクラウド上に伝送、遠隔地にある事務所のパソコン画面で現場の状況をリアルタイムに把握する。