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「ちょい飲み消滅でも超強気」売上2割減の日高屋がマクド並みの集中出店を目指すワケ (2/2ページ)

 ■首都圏を知り尽くす企業文化

 出店立地として、これまで酒類が売れないロードサイドの店舗を閉店したり新規出店を避けてきたが、再びロードサイドに着眼するようになり、21年3月11日に「日高屋 岩槻インター店」、4月23日に「日高屋 野田16号店」をオープンしている。さいたま市大宮区の住宅街を抜ける国道17号線沿いの「日高屋 大宮大成店」は以前、ちゃんぽん専門店の「ちゃんぽん 菜ノ宮」として営業していた店舗を「日高屋」としてモデルチェンジしている。

 22年2月期の下期では新規出店を5店舗予定しており、うち3店舗がロードサイドとなっている。

 ハイデイ日高の「物件情報募集」を見ると、出店エリアは東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県となっている。これも行田工場を中核としたこれまでの物流網の中で600店構想に邁進していく構えということだ。ちなみに、これと同じエリアの飲食店店舗数のトップはマクドナルドの約900店舗となっている。

 ■首都圏での強さを盤石にしていく

 このような首都圏集中出店は自社競合が心配されるが、多様な業種・業態によってクリアしてきた。本社のあるJR大宮駅周辺には、東口に7店舗、西口に5店舗存在する。これらの内訳は「日高屋」4店舗、「焼鳥日高」2店舗、「来々軒」2店舗、「中華一番」「とんかつ日高」「らーめん日高」「大衆酒場HIDAKA」各1店舗である。酒類提供で客単価が上がる業態から、とんかつ、ラーメンといった食事目的の業態までバランスよく配置している。集中出店が行われていても、自社競合を回避できているポイントがここにある。

 ロードサイド立地は駅前立地が持つ酒類提供の強みを発揮することは難しいが、駅前立地でつくり上げた「安定したクオリティーと低価格」という知名度の高さが顧客ロイヤルティーを醸成して集客につながる。

 ハイデイ日高の首都圏600店舗構想がもたらす最大の強みは「首都圏を知り尽くす」ことだ。この出店戦略は一朝一夕でつくり上げることは無理で、1973年に創業の店を大宮に構えて以来、50年の年月によって培われた。

 これらを背景にして自己資本比率85%という健全な財務基盤を生かし、ぶれることなく首都圏600店舗構想を進めていくことは、アフターコロナにおいてこれまでの強みが復活することに伴い、首都圏での「日高屋」の強さを盤石にしていくことであろう。

 

 千葉 哲幸(ちば・てつゆき)

 フードサービスジャーナリスト

 1958年生まれ。青森県出身。早稲田大学教育学部卒業。経営専門誌である柴田書店『月刊食堂』、商業界『飲食店経営』とライバル誌両方の編集長を歴任。2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。

 

 (フードサービスジャーナリスト 千葉 哲幸)(PRESIDENT Online)

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