休日の家族連れも増加
虎ノ門横丁ならではのユニークな“仕掛け”もある。その一つが「寄合席」。各店舗を巡って注文した料理を店外に持ち出し、堪能することができる。
そして「角打ち」。クラフトビールのブリュワリーやワインセラー、クラフトジン蒸留所があり、BYO(Bring Your Own)スタイルで好きな酒類を楽しめる。その名の通り、「人と人とのつながりを誘発する共有スペース」(塚本さん)だ。
その試みは、意外にもファミリー層を取り込むことにもつながった。塚本さんによると、高級店はなかなか子供連れで入ることが難しく、入店しても子供が食べられるメニューが少ないケースが多いという。しかし、塚本さんは「虎ノ門横丁では大人も子供も好きなものを選んで食べることができる。家族連れで横丁を訪れる目的が、買い物やレジャーのついでではなく、食そのものになっているようだ」とみる。
オフィス街として知られる虎ノ門。これまで女性や家族連れにはあまりなじみのなかったエリアだが、虎ノ門横丁の「本質」と「親しみやすさ」を重視した試みが新たなニーズを開拓し、期せずしてコロナ禍を乗り切る突破口となった。
「名店」といわれる飲食店も例外なく、コロナ禍の影響を受けている。生き残りをかけ、経営者が難しいかじ取りを迫られる中、店舗が持つ「個の力」を失わずにユーザーの裾野を広げている虎ノ門横丁は、「withコロナ」時代を生きる飲食店の一つの在り方を示しているともいえる。
【Bizプレミアム】はSankeiBiz編集部が独自に取材・執筆したオリジナルコンテンツです。少しまとまった時間に読めて、少し賢くなれる。ビジネスパーソンの公私をサポートできるような内容を目指しています。アーカイブはこちら