新型コロナウイルス禍で男性向け化粧品の売り上げが伸びている。若い世代を中心に、メイクも身だしなみの一つと捉える人が増え、化粧品大手が実施している「肌診断」を受ける男性が急増しているという。なぜコロナ禍で男性の美容意識が高まったのか。
男性の肌診断
調査会社の富士経済によると、男性向け化粧品市場は1571億円(2021年見込み)。2011年(1034億円)から約1.5倍も伸長した。男性の間でも日常的にスキンケアなどに取り組む風潮が広まり、コロナ禍でマスク着用による肌荒れ対策をコンセプトにした商品が相次いで発売された。男性向け化粧品に特化した売り場を設ける店舗もあるという。
伸長を牽引(けんいん)するのは、メンズ整肌料やメンズ洗顔料といった基礎化粧品だが、男性の美容への意識は日々のスキンケアにとどまらない。
「マスク生活が長引いて肌トラブルが気になり始めたことやテレワークで自身の顔を画面で見る機会増えたことで、肌分析や自分の肌を知ることに興味を持つ方が増えたのではないか」
こう語るのは化粧品大手、ポーラが展開するジェンダーレスの美容ブランド「APEX」のブランドマネージャー、田村明子さん。オンラインのリモート会議が増え、パソコン画面に映る自分の身だしなみや「オンライン映え」を気にする男性が増えているようだ。
一般的に男性の肌は皮脂量が多く、毛穴が目立ちやすいといわれるが、自分の肌の“健康状態”を気にする男性も少なくない。ポーラによると、同社の「肌分析」サービスを受けた男性は今年6547人(8月末現在)。昨年の同じ時期と比べて約73倍と急増した。特に20~30代の利用が目立ち、全体の約半数を占めている。
同社の「肌分析」を体験した30代の男性は「自分自身の肌の長所短所を理解し、肌状態に合わせたスキンケアを実践できたことが嬉しかった」と話したという。
ポーラの田村さんは「美容のジェンダーニュートラル化は進んでいるものの、まだ女性に比べて男性は情報も少なく、友人知人と会話する機会も少ない。だから、肌の調子が悪くても、なぜ悪いのか、どうしたらいいのか、何がいいのかの正解が分からないという人もいる」と話す。美容業界もジェンダーレス化が進みつつあるようだ。