「本の要約を読んだ人が書籍を購入してくれるという流れがあり、これまで届かなった読者にも(要約サービスによって)届くようになったという実感があります」。ビジネス書や生活実用書を取り扱う「大和書房」営業部副部長の大和哲さんはこう話す。2017年に刊行された『人生を変えるモーニングメソッド』(ハル・エルロッド著)は、フライヤーで本の要約が掲載されたことで脚光を集め、1万7000部の再販につながった。「中小出版社では独自にデジタルコンテンツを運営し、リアル書店に波及させることは簡単ではない」(大和さん)だけに、本の要約サービスと出版社は“共存共栄”の関係にある。
2年間で法人会員は3倍に
実際、要約を読み終えた人の15~20%が「Amazon」などの通販サイトにアクセスしているとのデータもあり、フライヤーへの掲載を機に増刷に至ったケースも少なくないという。リアル書店との提携も進む。2020年10月からは日本出版販売と協業を開始。全国870店以上の書店で「フライヤー棚」を設置するフェアも開催され、対象書籍のPOPのQRコードをスマートフォンで読み取ると、フライヤーの要約ページを「立ち読み」できるサービスを実施した。フライヤーによると、対象書籍の売り上げは約2割増加した書店もあるという。
通勤や休憩時などの「スキマ時間」を有効活用し、ビジネスのヒントや教養を効率よく身につけたい人には打ってつけだが、近年は法人の利用も増えている。法人会員(月額5万5000円から)は2年間で3倍に急成長を遂げ、累計380社超が利用。大賀さんは「人材育成の一環として利用してもらっています。製造業や商社など業種はさまざまです。最近は銀行や信用金庫などの金融機関の利用が特に伸びています」と語る。
コロナ禍でリモートワークが一気に普及し、自宅にいながら気軽に学べる「ツール」として企業の注目を集めているようだ。
大賀さんは「社長や上司が『本を読みなさい』と言ってもなかなか読書の文化が根付かないという悩みは多く伺います。気軽に本の要約を読んで知的好奇心を刺激していただき、少しずつ読書の習慣を身に着けてもらえれば」と話している。
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