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野村総合研究所 デジタル化踏まえ「増価蓄積」に対応

 会長兼社長・此本臣吾さんに聞く

 --新型コロナウイルスが日本経済に与えた影響をどうみる

 「コロナによってデジタル化が急速に進み、日本経済は岐路にさしかかっている。コロナ禍収束後の日常生活について、今年7月に実施した調査で『コロナ禍前の生活に戻る』との回答は3割未満で、半数以上が『戻らない』だった。その理由として18%が『今の生活に慣れた』と答えた。消費支出も『より少なくする』が2割近くあり、(外出自粛で使えなかったお金を使う)リベンジ消費は期待できない」

 --企業も行動変容を余儀なくされた

 「必要に迫られたとはいえ、テレワークの推進やビジネスのオンライン化などでコストを削減し、デジタル化を加速させた。コロナ禍をデジタルの活用でうまく吸収し、筋肉質になっており、もはや元に戻すことはない」

 --日本経済が成長を取り戻すのに必要なことは

 「今の産業構造のままでは2030年代前半にはマイナス成長に陥る。データで価値を生み出す構造への切り替えが待ったなしで、国全体でデジタルファーストにシフトすべきだ。今までは時間とともに価値が減少する『減価償却』だが、デジタル化により製品投入後に市場反応を見ながら中身をアップデートして価値を高める『増価蓄積』の世界が訪れる」

 --デジタル化の進展は野村総研の業績にも追い風では

 「業種に関係なく、顧客企業はビジネスモデルのオンライン化に動いており、ニーズに応えきれない状況だ。アップデートを繰り返す増価蓄積は、システム業界に持続的な需要をもたらすのでビジネスチャンスとなる。継続的に選ばれるビジネスモデルを構築する」

 【プロフィル】このもと・しんご 東京大大学院工学系研究科修了。昭和60年野村総合研究所入社。平成16年執行役員などを経て28年社長。令和元年6月から現職。東京都出身。

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