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「コメント欄閉鎖も初めて導入」ヤフーは誹謗中傷コメントを排除できるのか (1/3ページ)

 ヤフーは10月19日、ヤフーニュースのコメント欄を記事単位で非表示にするなどの新たな誹謗中傷対策を発表した。同月初めには、コメント欄に「過度な批判、攻撃的な投稿」を書き込まないことを求める注意書きも出していた。秋篠宮家の長女眞子さまの結婚についての発表があり、誹謗中傷のコメントが急増したからだとみられている。桜美林大学の平和博教授は「欧米ではプラットフォームへの規制が強化されている。ユーザーが安心して利用できることが重要だ」という--。

 ■AIが判定し、記事単位で「非表示」に

 ヤフーは総選挙公示日の10月19日、「ヤフコメ」と呼ばれるヤフーニュースのコメント欄の新たな誹謗(ひぼう)中傷対策を発表した。今回の対策では、規約違反の投稿を繰り返したユーザーの「投稿停止措置」の強化や、総選挙期間中の注意メッセージの表示のほか、コメント欄そのものを記事単位で非表示にする初めての対策も盛り込んでいる。

 同社はこれまで、人工知能(AI)を使って規約違反のコメントを自動削除するなどの対策を行ってきた。今回の対策はこれに加えて、投稿数が一定数を超えた記事のコメント欄を対象に、AIが規約違反コメントを点数化し、基準に達した場合はその記事のコメント欄そのものを非表示にするという(コメント数や点数の具体的な数値は明らかにしていない)。言わば、コメント欄の部分的な閉鎖の仕組みの導入だ。

 ユーザーが自由に投稿できるプラットフォームは、一方でフェイクニュースや誹謗中傷など違法有害情報の拡散の舞台にもなる。世界的な批判の高まりを受け、米国やEUではプラットフォームへの規制強化の議論が続く。

 ヤフーニュースのコメント欄にも、以前から誹謗中傷投稿への対策が不十分だとの指摘が根強くある。プラットフォームは有害情報を排除できるのか。改めてそんな疑問が突き付けられる事態が10月初めにも起きていた。

 ■「不適切な内容も散見されたため」

 「10月1日、Yahoo!ニュース コメント投稿数が急増しました。その中には、不適切な内容も散見されたため、記事ページやコメント欄などに注意書きを追加し、ユーザーのみなさまへのご協力をお願いするとともに、パトロールを強化しています」

 ヤフーは10月2日、「ユーザーのみなさまへのお願い――コメントの投稿にあたって――」と題する声明文を掲載。その中で、「いま一度、コメントポリシーをご一読いただき、過度な批判、攻撃的な投稿はお控えください」などとする、ユーザーへの呼びかけを行った。ヤフーがこのような呼びかけを行うのは、プロレスラーの木村花さんが、誹謗中傷過熱の中で死亡した昨年5月以来だ

 ヤフー広報室はこの声明文について、「コメントの詳細や、個別の記事に関しては回答を控えさせていただきます」としている。10月1日は、自民党の岸田文雄総裁による新体制発足の日であり、プロ野球の日本ハムが斎藤佑樹投手の現役引退を発表した日でもある。

 ただ、ネットユーザーの関心を集めたのは、宮内庁が午後2時から行った記者会見だったようだ。そこで明らかにされたのは、眞子さまの結婚の日取りと、眞子さまが「複雑性PTSD(心的外傷後ストレス障害)」である、との診断結果だった。その原因とされたのは、結婚を巡る誹謗中傷だ。

 ■宮内庁の発表を境に反応が過熱する

 同日午後6時すぎの、ヤフーニュースの「コメントランキング」の「総合」ジャンルを見ると、40件のランキング入り記事のうち、トップ3を含む25件が眞子さま関連だった。トップは「眞子さまが複雑性PTSD状態に 宮内庁公表 医師『結婚巡る誹謗中傷で』」(毎日新聞)で、コメント数は1時間あたり5821件、その後のコメント総数は2万2000件超だった。

 ただし、この件数にはヤフーによる「不適切な内容」の削除分は含まれていない。参考までに宮内庁の会見の前、同日午前9時すぎの「コメントランキング」を見ると、トップは「自民党副総裁に麻生太郎氏を起用へ」(毎日新聞)でコメント数は1時間あたり1177件(その後のコメント総数は1万8000件超)。ランキング入りした40件の記事の中で、眞子さま関連は12件だけだった。宮内庁の発表時間を境にした反応の過熱ぶりがわかる。

 ヤフーは、ツイッターの投稿をキーワードで検索できる「リアルタイム検索」というサービスを提供している。これを使って「眞子さま」というキーワードの関連投稿を調べると、宮内庁の発表が行われた10月1日午後2時だけで1076件と急上昇し、翌2日午前0時までで計2万7395件に上っている。

 そして、投稿に含まれる言葉から感情の傾向を機械的に判定する「感情の割合」というデータを見ると、78%はネガティブ(22%がポジティブ)と判定されている。ヤフーニュースにとどまらない、ネット上の関心の高さと、その反応の傾向がうかがえる。

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