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「ドライバーの異変を察知し停車」 先進安全技術搭載のトラックができること (1/3ページ)

 宅配便取扱個数の増加、ドライバー不足、長時間労働と、物流業界が抱える課題は多い。それらを背景に、トラックへの先進安全技術搭載が進んでいる。どんな技術があるのか。交通コメンテーターの西村直人さんが解説する--。

 宅配便取扱個数は前年比「148%」

 小型から大型まで、たくさんのトラックが顧客の荷物を運ぶ。そうした実体経済を下支えする物流業界では、昼夜を問わない過酷な労働環境が突き付けられている。その要因のひとつが、取扱個数の急増だ。

 国土交通省「物流政策課」の最新調査によると、2019年と2020年の同時期における宅配便取扱個数は最大で148.0%と大幅な伸びを示した。

 これはコロナ禍によるリモートワークなどから在宅率が高まり、インターネット経由によるショッピングである「eコマース」の利用率が一気に上昇したことが主な理由だ。さらに、コロナ禍以前から国を挙げて取り組んできた、生活のIoT化や企業のDX促進によるところも大きい。

 一方で、企業間における運送収入は前年同月比において、軒並み10~30%程度落ち込んでいる。こちらは、人の移動が大幅に減ったことで各種工場の稼働停止や生産調整による資材の運搬が低迷したことが要因だ。

 いずれにしろ、人の行動に伴う物やお金の流れが多様化したことで、社会全体の仕組みが大きく変わり始めている。

 ドライバー不足に長時間労働…課題は多い

 さらに物流業界では、トラックを運転するプロフェッショナルドライバー不足への対策も不可欠だ。2019年10~12月期では運送業を営む企業の64%が「不足」、もしくは「やや不足」と訴えた。

 ドライバー不足は2020年1~3月期に限定すると47%と一時的な改善がみられた。だが、コロナ禍の影響を本格的に受け始めた4月以降は前述したeコマースの増大をきっかけに、再びドライバー不足に転じている。加えて、高齢化対策も重要な課題だ。

 長時間労働への対策も急務。トラックドライバーの平均的な業務時間は13時間27分(1時間23分の休憩や、荷物の積み降ろしなどの荷役と待ち時間を含む)と長時間にわたる。

 このように、小口物流の増加対策や深刻化するドライバー不足への対応、さらには高齢化対策や長時間労働の解消に加えて、運送業務中に発生する交通事故の削減も物流業界には求められる。

 現在、トラックの安全な運行は先進安全技術の活用でサポートされている。その代表的な機能が「衝突被害軽減ブレーキ」だ。衝突被害軽減ブレーキは次の2つの段階から構成される。

 まず、第一段階の「システムからドライバーへの報知」として、自車の衝突危険性が高まった場合に、警報ブザーやディスプレイ表示などでドライバーによる危険回避動作をシステムが求める。

 次に第二段階の「システムによるブレーキ制御」として、システムからの呼びかけにドライバーが応答できない場合に、自動的なブレーキ制御が介入し、自車速度や交通環境によっては衝突せずに完全停止、または軽微な衝突で被害を最小限に留めようとする。

 「衝突軽減ブレーキの義務化」が段階的に進む

 トラックにおける衝突被害軽減ブレーキの義務化は、今から約7年前の2014年11月からGVWごと段階的に施行されている。車両総重量であるGVWとは、車両重量+積載する積荷+乗員の重さを足した値でt(トン)で示される。

 日本では、このGVWが大きい(=重い)大型トラックから順次義務化が施行され、2019年11月からは小型トラック(GVW3.5t~8t以下)にまで法律が適応された。よって現在、日本で販売されているトラック(GVW3.5t~22t超)の新型車すべてには、衝突被害軽減ブレーキが標準で装備されている。なお、法律が施行された時点ですでに販売されている継続生産車には、装着義務に対する2年間の猶予が設けられた。

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