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破壊された「聖地」のレトロ自販機が復活 名古屋市のメーカーが無償修復 (1/2ページ)

SankeiBiz編集部
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 若い男がハンバーガーの自動販売機のボタンをこぶしで何度も殴って破壊する防犯カメラ映像が話題になった神奈川県相模原市のレトロ自動販売機が復活し、19日午後から販売を再開した。骨董品のような自販機が残っていたことに感動したという名古屋市のプラスチック部品メーカーの社長が無償で修復作業を引き受けた。経年劣化の黄ばみも忠実に再現。自販機を所有する男性は「動かなかったものが動き出した。感謝しかありません」と喜んでいる。

部品メーカー社長との縁

 被害に遭ったのは、約35年前に製造されたハンバーガーの自販機。注文ボタンが押されると電子レンジで調理され、ほかほかのハンバーガーが出てくる。35~40年前の自販機が90台以上も並ぶタイヤ販売店「中古タイヤ市場相模原店」社長の齋藤辰洋さん(49)は「最も思い入れの強い機械だったのでショックだった」と振り返る。だが、ハンバーガーのレトロ自販機に思い入れがあったのは齋藤さんだけではなかったようだ。

 「子供の頃、父親にドライブインに連れて行かれ、あのハンバーガーを食べました。自販機が壊されたと報道で知り、まだ残っていたのかと驚きましたが、これなら直せるとも思い、『うちがタダでやります』と申し出ることにしました」

 こう語るのは名古屋市のプラスチック部品総合メーカー「エッチアイ技研」社長の原隆二さん(50)。普段はメーカーの依頼で自動車部品の試作をしたり、「レトロカー」の部品を金型から起こして復元したりしているという。自販機を所有する齋藤さんと同世代の原さん。破壊されなかった別のボタンを齋藤さんから取り寄せると、レーザーで細かく寸法を測定し、「CAD」と呼ばれるコンピューターを使った設計ツールを使って、図面を一から起こすことにした。

 原さんや同社の技術者らは通常の仕事の合間を見ながら、約1カ月かけてボタンを製作。プラスチック部品は紫外線や雨水などに長年さらされることで劣化し、黄色く変色するが、新たに作られたボタンは、その経年劣化も忠実に再現された。齋藤さんも「形や色も完璧で、何の違和感もなく元通りになっていた」とその出来栄えに舌を巻くほどだった。

 昭和レトロの雰囲気を色濃く残す自販機が勢ぞろいした場所は全国的にも貴重で、「レトロ自販機の聖地」とも呼ばれる。北海道からわざわざ訪れる人もいるほど人気のスポットになったが、有名になると、どうしてもごく一部、不埒(らち)な者も現れるようだ。骨董品モノの自販機が何者かに破壊されたのは9月5日深夜だった。

 それから1カ月半が経った今月19日午後、原さんは部下の技術者とともに相模原市の「聖地」を訪ね、自販機に部品を取り付けた。今も世間の関心は高く、多くの人が修復作業を見守っていたという。自販機が再び稼動したのは午後3時ごろだった。

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