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3D撮影「2眼VRレンズ」27.5万円でもお買い得? キヤノン新戦略“視界良好” (1/2ページ)

SankeiBiz編集部
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 カメラ大手のキヤノンが、既存のミラーレスカメラで180度のバーチャルリアリティー(VR)映像を撮影するシステムを発表した。その中心となる専用レンズ「RF5.2mm F2.8 L DUAL FISHEYE」は、魚眼レンズが横に2つ並んだ“異形”のアイテムだ。12月下旬発売。公式オンラインストアでの価格は27万5000円(税込み)と値は張るが、動画撮影・編集の手間を低減できる特長がある。同社はVRがエンターテインメントからビジネス領域へ、そして個人の楽しみへと広がる未来に焦点を合わせているという。

視差のある映像を手軽に撮影

 「基線長(左右のレンズ距離)は6センチメートル。これは人間の顔を参考に作られています」。キヤノンの広報担当者はVR専用レンズの設計についてこう説明する。

 2つの魚眼レンズから入った光を1つの「CMOSセンサー」(画像を読み取る半導体センサー)を通して記録するため、作成した動画ファイルでは、映す範囲がわずかに違う円形の映像が2つ並んで表示される。

 これを頭部に装着するヘッドマウントディスプレー(HMD)などの機器で視聴すると、右目と左目に視差のある映像が送られて奥行きを感じられる仕組み。最終的には人間の目でVR動画を見るのだから、撮影機材も人間の目に合わせて設計したというわけだ。

 キヤノンが開発したVR撮影システムのメリットは、VR動画作成に関わるさまざまな手間を省ける点だという。「これまでは2つのカメラを並べて撮影し、その後、パソコンで映像をつなぎ合わせる作業が必要になることもありました。2つのレンズが一体化したレンズであれば、撮影前に2台のカメラの位置や設定を細かく調整することもありませんし、撮影が終了した時点でVR用の動画が出来上がっているので映像をつなぐ作業も発生しません」(広報担当者)。

 また、同社の高級機種と同じ「Lレンズ」を採用したVRレンズは、単体で見ると高価だが、対応するミラーレスカメラの本体「EOS R5」(同50万6000円)があれば、他のVR撮影専用の機材を買いそろえるよりも費用を抑えられる可能性があるという。

 キヤノンがVR業界に参入した背景には、VR技術がじわりと浸透しだしたことがある。ゲーム・アトラクションなどのエンターテインメント分野での活用が注目されがちだが、実物大の模型を作るのが難しい自動車を3D空間上にCGで映し出し、設計や整備方法の知見をメーカーの海外法人とオンラインで共有するといった産業利用の需要もある。

 9月30日~10月3日に行われた日本最大規模のゲーム見本市「東京ゲームショウ」では、新型コロナウイルス感染症対策で幕張メッセ(千葉市)の会場を大幅縮小し、代わりにインターネット上の“VR会場”で各企業が情報を発信する新しい取り組みが行われた。「茨城県のように名所をVRで紹介して観光客誘致につなげようとする自治体や、不動産業者が物件のオンライン内見でVRを利用するケースもある」(キヤノン広報)という。

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