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スーツも人生相談もおまかせ AIスナックママ「よしこ」青山商事の新境地

SankeiBiz編集部
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 時に励まし、時に親身になってアドバイスをくれる。聞き上手なスナックのママたちの“技術”をAI(人工知能)化したお悩み相談チャットボット「よしこ」が人気を集めている。相談内容は仕事や将来の悩み、恋愛と多岐にわたり、相談件数は公開からわずか2カ月で累計8万件を突破した。「よしこママ」をプロデュースしたのは、紳士服販売チェーン「洋服の青山」などを展開する青山商事(広島県福山市)。新型コロナウイルス禍でストレスや悩みを抱えながら働く若者が気軽に相談できる場所として開発した関係者も「短期間でこんなに相談が寄せられるとは思ってもみなかった」と驚きを隠せない。

 50時間に及ぶインタビューから解析

 昭和の甘くうっとりするようなメロウな曲が流れる店(サイト)で、「いらっしゃい」と出迎えてくれるよしこママ。カウンターに座り、「ちょっと聞いてよ~」と愚痴(ぐち)を吐露するように、画面の下に表示されるAIチャットボットで悩みを打ち明けると、それに対しママが返答してくれる仕組みだ。

 「コロナ禍で若いビジネスマンがストレスや悩みを感じているという調査結果を踏まえ、気軽に悩みを打ち明けられる場を作りたかった」という同社。近年、若者の間でブームとなっているスナックに着目し、オンライン上でAIスナック「よしこ」をオープンさせた。

 よしこママの制作にあたっては、“日本一のスナック街”ともいわれる宮崎県の繁華街、西橘通り(通称、ニシタチ)のママたちに計50時間に及ぶインタビューを敢行。悩みに対するアドバイスを解析し、ママたちの対応や会話をもとにデータベースを構築したという。

 よしこママに集まった8万件以上の相談から、実際に若者がどのような悩みを抱えているのかを分析すると、最も多かった世代は40代。相談内容は「人間関係」が多く、中でも「上司への悩み」が目立つという。「上司に責任感がない」「上司と価値観が合わない」といった悩みも寄せられていた。

 そんな悩みに対し、よしこママはこう答える。

 「一緒に仕事をする上で上司との関係性は大事よね。でも職場っていうのはもともと性格や価値観が合う人ばっかりじゃないし、あまり考えすぎないほうがいいと思うの。そういう人とうまくやっていくには、自分から近寄ることかな。相手が自分に何を言おうとしているのかということを理解することが大事」

 このほか、「将来の仕事」や「恋愛関係」「家族の将来」など将来に関する相談や、「モテたい」「よく見られたい」「使いすぎてお金が貯まらない」などといった悩みも多く寄せられている。それらの悩みに、一つずつ答えるよしこママは、AIとして自らも成長を重ね、このほど「第2形態」へと進化を遂げたという。

 同社のリブランディング推進室の山尾真実子さんは、「いつでも、どこでも、ママたちの優しさや温かさを感じることができる。そして悩みが軽くなるような、ホッとして、クスッと笑って元気がもらえるようなAIチャットボットを目指している」と話す。

 それにしても疑問なのは、このAIスナックママを青山商事が手掛けた理由だ。よしこママとしつこくやりとりを続ける中、試しに質問の選択肢で「悩みがない」を選んでみた。

 すると、「じゃあ、そんなあなたには私から質問させてもらうわ。洋服の青山について知りたいこととか、何かお願いしたいことはある?」と、唐突に「洋服の青山」に言及された。

「企業PRとしてはちょっと遠回りですが、このような形で働く人たちへの応援を通じて新規のお客様との接点が増えたら」という山尾さん。寄せられた“悩み”を受け止める格好で、「今後はビジネス上でのコミュニケーションの悩みが軽くなるような新しい商品などを企画したい」と話している。

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SankeiBiz編集部 SankeiBiz編集部員
SankeiBiz編集部員が取材・執筆したコンテンツを提供。通勤途中や自宅で、少しまとまった時間に読めて、少し賢くなれる。そんなコンテンツを目指している。

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