金融庁は22日、障害が多発するみずほ銀行のシステム運営を事実上管理する異例の方針を打ち出した。前身の旧3行の主導権争いを背景に複数の業者がかかわり、複雑化したシステムをみずほは掌握しきれず、原因究明に時間がかかる中で金融庁の関与を招くことになった。みずほは従来、システム自体に問題はないとの認識を示してきたが、金融庁は検証する方針だ。
「金融庁の措置は、金融機関として1人前ではないという烙印(らくいん)を押すような厳しい内容。旧3行が融合できず、過去の障害で適切な対策を講じなかったツケだ」。大手銀行の関係者は、こう突き放した。
他のメガバンクである三菱UFJ銀行と三井住友銀行はそれぞれの合併時、運営効率化などのためにシステムを一本化し、開発や運用については三菱UFJは日本IBM、三井住友はNECに主に委ねている。
だが旧第一勧業、旧富士、旧日本興業の3行が経営統合して誕生したみずほは主導権争いが続いたとされ、旧行のシステムを併存させる形で平成14年4月に開業。同月と23年3月に大規模なシステム障害を招いた。
これを教訓に4000億円超を投じて新たなシステム「MINORI(みのり)」を令和元年7月に全面稼働させたが、ここでも旧3行の縄張り意識が影を落とす。旧3行が利用していた富士通、日本IBM、日立製作所に加え、NTTデータも携わり、他行に比べて複雑な構造になった。
「システムが巨大で、全体像を完全に把握することは容易ではない」。今年6月にはシステム障害に関する第三者委員会は報告書でこう指摘し、開発段階から関与していた担当者の人事異動などでシステムの中身が外から見えない“ブラックボックス化”を懸念した。8月20日に発覚した今年5回目の障害では原因を特定できないまま金融庁に報告書を提出しており、みずほがシステムを掌握しきれていない状況も浮かぶ。
みずほはこれまで基幹システム自体ではなく、運用面に問題があるとの認識を示してきた。だが、金融庁はみのりや周辺システムに構造上の問題やリスクがあるか検証していく方針だ。
企業統治に詳しい青山学院大の八田進二名誉教授は「システムを運用、管理できない体制は歴代の上層部の負の遺産となって引き継がれてきた。みずほが出直し、信頼を取り戻すにはみのりを再構築するぐらいの覚悟で原因究明を進める必要がある」と指摘する。(高久清史)