観光地から生中継
そこで考えたのが、クラウドファンディングだった。社内では「リターンメリットが少ないため失敗するのでは」と心配する声もあったが、多くの人が高齢者のエンタメを創設するとの構想に共感。計308万円の支援が集まり、昨年秋には山梨県の八ヶ岳、冬には岩手県で映像を収録した。「バーチャルのオンラインツアーにはオンラインの良さがあります」と春山さんは強調する。
旅行の「現実感」を演出するアイディアも次々と生まれている。「私どもで高齢者向けの団体旅行事業を行ってきて痛感したのは、ご高齢の方は土産物をたくさん買って帰るということです。普段は行くことができない土地の名物を買って、それをご家族や友人に渡すという楽しみ方をされているんですね」(春山さん)。
例えば、介護担当者にタブレット端末を持ってもらい、オンラインツアーで訪れる観光地の土産物をオンラインショッピングでその場で買えるようにする。現地の人とのコミュニケーションも旅行の醍醐味。観光名所や土産物店から生中継し、「ライブ感」を演出するという。ツアー参加者が購入した土産物は即日発送され、翌日にはツアー参加者の手元に届くようにする計画だ。
また、温泉地では入浴剤を配布。高齢者福祉施設の協力を得て、入所者に「足湯」を楽しんでもらう。「独特の硫黄の香りを感じながら映像を見てもらう」(同)という趣向だ。すでに複数の施設からツアー参加の要望が寄せられているという。父親との旅行の思い出を胸に始めたオンラインツアー。春山さんの夢は広がる。
「今後は世界一周旅行も考えています。毎月、各国の映像を流し、例えばスペインならパエリアを召し上がっていただくといった具合です。オンラインツアーの思わぬ反響に驚いています。高齢者向けの事業を進めていく中で、時代に合った新しい価値をつくっていくということが私の目標です」