スマートフォンを使い続ける期間は平均約2年で、買い替えサイクルが伸びていることが分かった。通信事業者を変えても同じ端末を使い続けられる環境が整いつつあることなどが背景にあるとみられる。米Appleは14日(現地時間)、主力のスマホ「iPhone」の新型機「13」シリーズを発表。24日に発売するとしている。2年前の2019年に「iPhone 11」を購入した層が購入を検討しているようだ。
NTTドコモのモバイル社会研究所が14日に発表した「モバイル社会白書2021年版」によると、国内の携帯電話利用者が最もよく利用する端末の内訳はスマホが92.2%、フィーチャーフォン(いわゆるガラケー)が7.7%だった。同調査では通信回線契約をしているタブレット端末もスマホに含めているが、スマホの比率が90%を超えたのは2010年以降初めて。
最もよく利用する携帯電話のメーカーでは米Appleが43.1%でトップだった。世界では中韓のメーカーとシェア争いをしているAppleだが、日本では“一強状態”が続いている。2位はシャープ(16.5%)、3位はソニーモバイルコミュニケーションズ(11.3%)で、4位以降は韓国サムスン(5.3%)、京セラ(5.2%)、富士通コネクテッドテクノロジーズ(5.1%)などが並んだ。
2021年のスマホの所有期間は平均1年11カ月で、2016年の1年6カ月から大きく変化している。2年以上使い続ける層が徐々に増える傾向がみられ、今年は約40%を占めた。買い替えサイクル長期化の一因として考えられるのが、携帯電話を自社回線でしか使えないようにする「SIMロック」の解除が一般的になったことだ。
ガラケーやスマホには契約者の情報を記録したSIMカードという部品が入っており、技術上の問題がなければSIMカードを入れ替えることで別の会社の回線を使えるようになる。通信事業者は不正転売防止などの理由でこれを制限していたが、2015年に総務省の要請でSIMロックの解除が義務化され、大手通信事業者から購入したスマホを仮想移動体通信事業者(MVNO)が提供する格安料金プランの回線で使い続けられるようになった。
SIMロック解除の件数は増加しており、近年は四半期ごとに60万件から100万件程度で推移していたが、NTTドコモが「2020年8月から一括購入やクレジットカード分割払いのお客さまには、申し出がなくてもSIMロックを解除した端末をお渡ししている」(同社広報部)こともあって2020年度第3四半期は350万件を超えた。
同省はさらに踏み込み、今年10月以降はSIMロックを原則禁止する。加えて、SIMカードをスマホ本体に埋め込む仕組みで、オンラインの手続きだけで回線を開通できるようにする「eSIM」の普及拡大にも力を入れる。通信事業者や割安のブランドに乗り換えやすくして価格競争を促し、利用料金の引き下げを狙った施策だが、節約志向の高まりもあって今後の機種変更の減少につながる可能性がある。
また、スマホの性能が“高止まり”しつつあり、数年前の機種でも最新のアプリやサービスを問題なく利用できるようになったことも影響を与えている。
機種変更のペースが鈍化していても、カメラの性能を強化し、動画撮影で映画のような効果が得られる機能を導入したiPhone 13への注目度は高い。2年前にiPhone 11を購入した人にとっては平均な買い替えのタイミングであり、高速大容量の次世代通信規格5GについてiPhone 11が非対応機種、iPhone 13が対応機種であることも買い替えを促す要因になる。17日に予約が始まるが、今年のiPhone商戦は例年以上に盛り上がりそうだ。