文挾誠一社長(61)に聞く
--主となる再生エネルギー事業をどう強化するか
「国の2050(令和32)年カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量実質ゼロ)表明などを受け、洋上風力や水力など国内外で約600万~700万キロワット分の再エネ発電事業の新規開発を行う目標を前倒して30年度までに行うこととした。各電力の外販拡大で事業基盤の充実を図ることで同時期に1000億円規模の最終利益確保を目指す。資金調達のため、当社初となるグリーンボンド(環境債、300億円)を発行して対応することとした」
--競合も増える中、洋上風力発電事業でどう差別化を図るか
「浮体式の国内外の展開を急ぐ。特に、国内では、20年代後半までに浮体式ウインドファーム(集合型風力発電所)の実用化を目指す。浮体重量が小さく、施工性などに優れ低コスト化が期待できる『テトラ・スパー型』を導入すべく、現在デンマークとノルウェーをまたいだ共同実証を海外企業と行うなど積極的に進めている。着床式では、4件目の案件として秋田県の八峰町・能代市沖を候補地とすることを決め、海域調査を行っている」
--主力の水力発電事業はどう発展させるか
「発電ロスを減らし、効率を高めることが重要だ。保守、管理などのデジタル化やロボット活用などでできるだけ点検、工事による稼働停止時間を減らす。また、水力発電所の新規開発は難しいため、長期運転している発電所を新たな設備に改修する『リパワリング』を行い、出力向上や施設の長寿命化を図る」
--中長期的にどういった企業体にしていきたいか
「再エネの主力電源化の流れもあり、今後、グループ内で主役となり得る会社と認識している。技術者や資金確保を進めつつ、特に風力発電という武器をしっかり手中に収め、発展したい」
【プロフィル】文挾誠一(ふばさみ・せいいち) 東京都立大経済学部卒。昭和60年東京電力入社。茨城支店水戸支社長、東京電力ホールディングス(HD)常務執行役経営企画担当などを歴任し、令和2年4月から現職(東電HD代表執行役副社長経営企画担当を兼務)。栃木県出身。