「商談や生産現場での指導・教育など、オンラインで行う限界を感じている企業は多い」と指摘するのは、JTB子会社で出張旅行の手配や経費管理のサービスを手がけるJTBビジネストラベルソリューションズ。今年7月時点でも海外出張の取り扱いが一昨年同月比1割未満で推移し、厳しい状況が続いているが、国内外でワクチン接種が進んでいることから「来年前半には海外出張が少しずつ持ち直すのではないか」と期待する。
同社は海外出張を検討する顧客の問い合わせに応じ入国やビザ(査証)、フライト状況などを一元的に発信する社内チームを昨年6月に発足。自然災害やテロのほか感染症のパンデミック(世界的大流行)などが起きた時点で社員の滞在場所や安否を即時につかみ、必要な時は出国をサポートできる態勢を敷いている。
望みの綱はワクチン
社内会議がオンライン化したことで、例えば会議のため出張先から東京の本社へ戻る必要はなくなった。航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏は「(海外の滞在先で)働きながら余暇を楽しむワーケーションが普及すれば、海外出張が増える」とみるが、「海外出張を復活させる重要なカギは、やはりワクチン接種だ」と言う。
好材料の一つは、日本でも7月26日から申請の受付が始まった海外渡航者向けのワクチン接種証明書(ワクチンパスポート)だ。対象国に渡航したとき、証明書を示せば入国時の隔離やPCR検査の陰性証明書の提出が免除される。
対象国はイタリア、オーストリアなど5カ国から始まった。今のところ政府は紙の証明書を発行するとしており、鳥海氏は「欧州連合(EU)で先行するデジタル版の開発を急ぐべき」としている。(田村慶子)