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「ゴミおせち」のせいで風前の灯火? 一世を風靡したクーポンサイト衰退の理由 (1/2ページ)

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部

 「24時間以内に〇人集まれば、コース料理が半額!」。こんな触れ込みで買い手を集め急拡大した「共同購入型クーポンサイト」の撤退や業態変更が相次ぎ、10年以上の歴史がある大手サイト「LUXA」も来年2月末でサービスを終了することが決まった。飲食店や買い物などで、地域ごとに利用者が一定数になれば大幅な値引きクーポンを発行する共同クーポン購入サイト。一時100サイト以上が乱立するブームとなったが、ある“騒動”をきっかけに衰退の一途をたどり、今や往時の面影はない。

“百花繚乱”の時代から終焉に

 共同購入型クーポンサイトと言っても、もはや若い人はあまりピンとこないかもしれない。それほど急速に廃れてしまった。かつて、と言ってもたかだか10年ほど前だが、レストランや居酒屋に行こうとすれば、多くの人がクーポンサイトをチェックする時代があった。予約サイトの「食べログ」などで店を探す感覚に近かった。

 「強烈なインセンティブ(動機付け)を提供することで、行ったこともないお店に代金を前払いするという全く新しいビジネスモデルを生み出したという点では、可能性がありました」。こう振り返るのは、全国の飲食店に予約管理システムを提供する「テーブルチェック」(東京)の谷口優社長だ。しかし、魅力的な店舗が掲載されなくなったことで消費者も次第に離れていった。一世を風靡(ふうび)した共同購入型クーポンサイトに何があったのか。

 ブームの火付け役は2008年に米シカゴで創業した「グルーポン」だった。居酒屋の飲み放題コースやホテルでの宿泊など、多様な商品・サービスを期間限定の割引クーポンとして販売。購入者はクレジットカードなどでクーポン代金を先払いし、提供を受ける仕組みである。

 店側にとっても、売り上げアップや宣伝効果などが期待できることから急速に普及。日本国内でもリクルート系の「ポンパレ」(のちの「ポンパレ―ド」)をはじめ、さまざまなサイトが生まれ、百花繚乱(りょうらん)の様相を呈した。

 そのブームに水を差したのが「スカスカおせち」。このワードで「ああ」と思い出した人もいるに違いない。グルーポンで販売されたお節料理が「見本と違う」として苦情が殺到した騒動だ。

 問題となったお節料理は、横浜市のレストランを運営する販売会社が2010年11月、定価2万1000円(税込み)のところ、「半額クーポン」の発行によって1万500円という触れ込みで500セット販売されたものだった。

 ところが、消費者の手元に届いたのは、およそお節料理とは呼べぬ代物。実際に届いた商品の画像は広くネットで出回り、一般的なお節料理のイメージとはかけ離れた見た目のインパクトから、当時ネット上では「ゴミおせち」とも呼ばれた。

 「キャビア」と表示していたものは、実際はキャビアに似たランプフィッシュの卵で、「フランス産シャラン鴨のロースト」は50セットで国産の合鴨のローストになっていたことも発覚したが、“食材偽装”以前に、盛り付けもずさんでスカスカ。とても美味しそうには見えなかった。

 後の消費者庁の調査で、お節料理の販売会社はサイト上で「通常価格21000円」「50%OFF10500円」と表示していたが、通常価格は架空だったことも明らかになる。消費者庁は2011年2月、景品表示法(優良誤認など)に基づき、販売会社に再発防止を求める措置命令を出し、グルーポンを運営する「グルーポン・ジャパン」に対してもサイト上に割引価格を表示する際、比較する価格が適正かどうか確認をするよう改善を求めた。

 ごく一部の不届きな業者の問題とはいえ、消費者離れを加速させる要因となったことは否めない。

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