新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府は20日、緊急事態宣言を、すでに発令中の東京、大阪など6都府県に加え、茨城、栃木、京都など7府県にも発令した。多くの企業が宴会や会食の禁止を続ける見通しで、宴会場やレストランを多く抱えるホテルは法人需要の落ち込みが続く。苦境を打開しようと、宴会場を葬祭や採用試験の会場として使うことを提案するなど、知恵を絞るホテルも出てきた。
8割「宴会せず」
「宿泊や挙式・披露宴と個人客で回復の兆しが見えた半面、緊急事態宣言下で会食や宴会を原則禁止にしている企業が多く、法人需要は依然厳しい」
リーガロイヤルホテルを展開するロイヤルホテルの財務担当役員はため息をつく。最大2千人を収容できる大宴会場も擁する同ホテル。大企業や学会のパーティー利用も多かったがコロナ禍で激減した。
同社の令和3年4~6月期連結決算は宿泊、レストラン、宴会の主要事業がいずれも前年同期から持ち直し、特に宴会の売り上げは約2倍に伸びた。
ただ、その宴会事業も新型コロナウイルス禍の影響がなかった一昨年水準の3割にも満たない。この役員は「昨年からの一番の押し上げ要因は、(コロナで)延期され今年に持ち越された婚礼。企業や団体の宴会利用は少なく、あっても小規模だ」と明かす。
法人・団体専用の会場検索サイトを運営するアイデアログ(東京都台東区)が同サイト利用者ら139人を対象に6月実施した調査によると、コロナ禍で82・7%が飲食を伴う宴会をせず、令和3年度も64%と過半数が宴会をしない予定と答えた。
パナ、積水ハウスなど会食禁止
また、宴会だけでなく、会食を禁じる企業も全国に多い。パナソニックは社外との会食や社内の歓送迎会を全国の事業所で禁止。積水ハウスも社外、社内ともに全国で禁止している。大阪ガスは会食を伴う懇親会について今月2日以降、社内外を問わず中止か延期とした。
大阪市内にある他の主要ホテルも法人利用は低迷している。「宣言下で企業も取引先などを宴会や会食に招きづらい」とホテルニューオータニ大阪(大阪市中央区)の担当者。同ホテルやホテルグランヴィア大阪(同市北区)は宴会場を使った企業主催の「お別れの会」などに注力し、法人顧客の呼び戻しを図る。
テレワークの増加でオフィスを縮小、廃止する企業の動きに着目し、宴会場利用を売り込むホテルもある。
プリンスホテルは東京都や京都府など傘下16ホテルで、会議や採用試験などの場所を求めるニーズに応え、時間単位で小中規模宴会場を貸し出すサービス(1時間3千円から)を7月に始めた。電話で受け付けていた予約手続きをオンラインでもできるよう簡略化した。担当者は「コロナ禍で宴会が減る中、新たな切り口でベンチャー企業などの顧客開拓につなげたい」としている。(田村慶子)