コロナ禍に「映像美」で挑む
地域の力が結集し、2019年に実現したのが運河を舞台にした大規模プロジェクションマッピングイベント「キャナルアートモーメント品川」だ。大きな壁面に映像を投影するだけでなく、さまざまなジャンルのパフォーマーがリアルに出演し、ダンスやミュージカルなどを繰り広げる。夜の闇に浮かび上がる幻想的なショーを見に、初開催にして3000人もの観客が訪れた。
東京オリンピック・パラリンピックに向けて東京ベイエリアの水辺開発が注目を集めるなか、2020年12月には都内で唯一の「プロジェクションマッピング活用地域」に指定された。上限面積となる100平方メートルを超える壁面での迫力ある投影が可能になり、さらに投影広告物による事業収益を地域活動費として活用することも認められた。さらに今回は「東京2020」の共催プログラムとして開催する。
イベントへの追い風は吹くも、ときはコロナ下。何らかの形で成果を示すことができなければ、イベントの存続は厳しい。「二度ならず三度までも…」立ちはだかる困難に三宅さんは苦い表情を浮かべるが、心は折れない。もともと二次利用する目的で注力してきた動画技術をオンライン配信へと応用し、2020年夏以降のイベントは全てリアルとオンラインのハイブリッドに体制を整えた。どんな形でも、これまで続けてきたお祭りを絶やしたくなかった。
「キャナルアートモーメント品川2021」は今月28、29日の2日間にわたって開催される。400人に絞った有観客体制も日を追うごとに厳しい情勢となるなか、「ならば」と情熱をオンライン配信に傾ける。「伝え方によっては端末の画面を通してでも見ごたえのあるパフォーマンスが演出できる」と三宅さん。ただ配信するのではなく、ドローンを活用したりカメラの台数を増やしたりと“魅せ方”に工夫を凝らす。
「オンライン配信は全国に届けることができる。少しでも多くの方に動画を観ていただき、視聴者の方が東京に来たときに天王洲に行ってみたいと思ってもらえるイベントにしたい」。天王洲の再生にかける情熱は衰えない。