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人間vsイノシシの“泥臭い”頭脳戦 DMMが広島で獣害対策、侵入防止→捕獲へ (1/2ページ)

 DMM.comグループで農業関係のビジネスを手掛けるDMM Agri Innovation(アグリイノベーション、東京)が、広島県で実施した獣害対策プロジェクトの2020年度の活動を終了した。県が地域課題の解決を目指して業者を公募する「ひろしまサンドボックス」の一環で、尾道市のびんご運動公園の土や芝生を荒らすイノシシの被害を軽減させたという。そこには“猪突猛進”のイメージとは異なり、慎重な野生動物との「頭脳戦」があった。

ドローンでは見つけられぬ“泥”

 「きれいな公園を市民に訪れてもらうことには、お金にあらわれない価値がある」

 広島県の土木建築局都市環境整備課の樋口稔課長は、イノシシ排除の成果に声を弾ませた。

 県が管理するびんご運動公園では野生のイノシシが侵入して土を掘り返す被害が相次いでおり、悩みの種になっていた。イノシシを排除する電気柵で公園の広い敷地を囲むことは難しく、従来の獣害対策では解決できなかったのだ。

 そこで県は昨年9月、獣害対策に役立つ情報や技術を提供できる団体の公募を開始し、同年12月までにDMMアグリと広島大が選定された。

 DMMアグリが昨年12月25日から今年5月31日まで実施した“イノシシ侵入軽減対策”は、周囲の環境やイノシシの生態を調べる「状況把握」、除草剤を散布したりイノシシが嫌うにおいを噴霧したりする「環境改善」、電気柵やイノシシのひづめでは歩けない専用の資材を設置する「侵入防止」の3段階に分けられる。近年の害獣対策ではIoT(モノのインターネット)やドローンなどのテクノロジーを活用する場面が多いが、DMMアグリは伝統的な獣害対策も重視した。

 「プロの猟師にサポートしていただき、直近で使われている獣道からイノシシの“導線”にあたりをつけて、(センサーで作動する)トレイルカメラやドローンで確実に把握するというハイブリッドな対策をすることで効果的な防護を行うことができた」(DMMアグリ担当者)

 同プロジェクトでは、赤外線カメラ搭載のドローンでイノシシを追跡撮影することにも成功している。しかし、それだけで行動パターンや侵入ルートが分かるわけではない。フィールド調査を行い、イノシシが寄生虫を落とすために泥を浴びたり粘土に身体をこすりつけたりする「沼田場」(ぬたば)を探す必要があった。沼田場はイノシシの行動を予測する重要な要素であるため“泥”くさく地道な調査が不可欠だったという。

 また、ITに頼りすぎるとメンテナンスの手間が多くなるため、日当たりのよい場所にはソーラーバッテリーの電気柵を採用してランニングコストや工数を減らすなどの工夫もした。適切な場所に防護資材を配置し、メンテナンスをする人員の負担を軽くすることで“お金に表れる価値”も生み出したと言える。

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