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“金の卵”探しに躍起、日航・ANAの非航空開拓へ模索続く 合理化効果で赤字圧縮

 国内航空大手2社の令和3年4~6月期連結決算が出そろった。日本航空とANAホールディングス(HD)ともに、新型コロナウイルス禍での黒字化とはならなかったが、前年同期から赤字幅を大きく圧縮させ、回復トレンドにあるとの見方を示した。ただ、脆(ぜい)弱(じゃく)性を露呈した航空事業一本足からの脱却は緒に就いたばかりで、今回はコスト削減に支えられた面が大きい。非航空事業の収益化に向けては模索が続く。

 「確実に回復基調にある」(日航の菊山英樹専務)

 「最悪期は脱しつつある」(ANAHDの福沢一郎専務)

 新型コロナ感染が再び急拡大する中、それぞれ決算会見で現状について前向きな認識を示した。

 最終損益の赤字額は、日航が前年同期の937億円から579億円に、ANAHDもほぼ半減となる511億円まで縮小した。両社とも航空機の削減や給与カット、人員配置の見直しなど徹底した合理化策が寄与した。

 本業の旅客需要は、出入国制限で厳しいながら両社とも国際線の収入が前年同期より増加に転じ、国内線はそろって2倍以上になった。また、巣ごもり需要で拡大している商品の輸送などを背景に航空貨物も好調だった。

 ただ、海外ではデルタ航空やアメリカン航空など米航空大手2社が、レジャー需要で好調な国内線を背景に4~6月期決算で黒字に転じており、それに比べると回復の遅れが目立つ。

 国内2社とも米国の需要回復の主な理由にワクチン接種の拡大を挙げ、ANAHDの福沢専務は「接種率が今後かぎになる」とし、4年3月期の最終損益予想は35億円の黒字(前期は4046億円の赤字)を維持。日航の菊山専務は通期の業績予想は現時点で見通せないとしながらも、接種の拡大により「日本でも速いスピードで回復できると期待している」と語った。

 一方、業績の回復傾向を下支えする経営の合理化には限界があり、航空貨物の好調も新型コロナ禍による海運の混乱が解消するとスローダウンする懸念がある。“一本足打法”といわれる航空事業への依存脱却は喫緊の課題だ。

 日航はドローン物流や小型航空機による近距離移動用の「空飛ぶタクシー」などを進め、売り上げ目標を「4、5年かけて1000億円」とする。ANAHDはスマートフォンアプリで仮想空間内の旅行などを楽しめるサービスを来年から開始。そのほか、走行機能とカメラを備えたロボットが、人間の分身として旅行や買い物をするサービスも始める。

 両社はマイル事業にも注力しており、対象のサービス範囲を金融などに順次拡大して収益化を図っている。機内食の通販や航空機内で結婚式を挙げてもらうサービスなどもある。

 もっとも、日航の菊山専務は事業の多角化について「そう簡単にいけば苦労はない」と冷静に構える。「どの事業も先入観を持たずに取り組んでいる」と“金の卵”探しに躍起だ。(福田涼太郎)

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