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自宅から世界中の観光地を望む…「オンラインツアー」の知られざる需要

SankeiBiz編集部
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 「Zoom(ズーム)」などのビデオ会議システムを利用して観光地巡りの気分を楽しむ「オンラインツアー」を、旅行に行く前の予習に役立てるという新たな使い方が生まれている。新型コロナウイルスの影響で低迷した旅行業界の“苦肉の策”とされてきたオンラインツアーだが、コロナ明けが近づきつつある今、リアルの旅行の需要を喚起する起爆剤として期待されているようだ。

 オンラインツアーは、パソコンやスマートフォンのビデオ会議システムを使い、現地の案内員が観光名所などを紹介する様子をリアルタイムで視聴するものが多い。費用は1000~5000円程度で、お酒などの観光地の特産品が自宅に届くプランもある。

 大手旅行代理店のJTBが行った調査によると、オンラインツアーに参加したことがある人は9.2%にとどまり、参加したことも、興味もないという人が68.5%を占めた。コロナ感染防止対策で修学旅行を取り止めた学校が「オンライン修学旅行」を実施する向きもみられるが、レジャーとしてのオンラインツアーが浸透しているとは言えない状況だ。

 同調査では今年の夏休みに国内旅行をする人が2019年比で44.8%減、20年比で5.3%増の約4000万人に上ることも分かった。1人あたりの平均旅行費用も同様に昨年から微増の約3万3000円。東京都と沖縄県では8月22日まで緊急事態宣言が続くこともあり、同社は大きな回復には至らないとしているが、明るい兆しが見え始めたことに違いはない。

 このままコロナ禍明けを迎え、国内外の旅行を安心して楽しめるようになったときにオンラインツアーはなくなってしまうのか。JTBの広報担当者はこう答える。

 「リアルな旅行が再開された後も、オンラインツアーに対する一定の需要は残るのではという手ごたえを感じておりますので、渡航再開となった後でも、需要があれば継続していく方向で検討しております」

 同社がオンラインツアーの販売を開始したのが昨年8月。それ以降、利用者から実際に旅行で訪れる前の“予習”になったというフィードバックが届いたという。自宅で仮想旅行を楽しむだけでなく、ガイドブックや雑誌で旅の下調べをするような感覚で参加した人もいたというわけだ。

 同社の今年4~6月の海外オンラインツアーの売れ筋ランキングを見るとトップ10は全て欧米で、ドイツ・ローテンブルクのロマンチック街道(1位)、フランス・ニースの地中海絶景スポット(5位)、スペイン・バルセロナのサグラダ・ファミリア(8位)など、まとまった休暇でもないとなかなか行けない観光地が人気だった。

 それだけに、リアルの旅行体験を充実させるための予習に熱が入った人も多かったかもしれない。予習とは逆に「過去に訪れた思い出の場所を見られてうれしかった」などと“復習”を堪能したという声もあったという。

 また、セレクトショップ、ディーンアンドデルーカのハワイ店舗のオンラインツアーに参加し、専用のサイトで店舗限定販売のトートバッグなどを買う「オンラインショッピングツアー」が売れ筋ランキングの2位と3位に入る人気ぶりだった。

 オンラインツアーの需要は、旅行気分を楽しみたい人以外にも広がる可能性を秘めているようだ。

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部 SankeiBiz編集部員
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