新型コロナウイルス対策で外出の機会が減少したことを受けて、不動産業界で「オンライン内見」が存在感を示している。ZoomやLINEなどのスマートフォンアプリを活用し、現地にいるスタッフとの会話やリアルタイム映像で部屋の様子を知る方式がヒットし、オンライン内見で物件を決めた人は87.9%に上った。対面で行われていた重要事項説明をテレビ会議でも可能にする「IT重説」が2017年から賃貸契約に限り認められたのを皮切りに、不動産売買や賃貸契約の手続きの電子化が進んでおり、入居までのさまざまな作業が簡略化されつつある。
調査会社のMMD研究所の調査によると、昨年4月以降に物件を探した1159人のうち訪問内見をしたのが53.0%、オンライン内見をしたのが37.9%、内見をしなかったのが24.5%だった(複数回答)。性年代別では20~30代の男性がオンライン内見を活用している傾向がみられた。
オンライン内見をした430人の契約に及ぼした影響については、87.9%にあたる378人が「オンライン内見で物件を決めた」と回答。さらに、オンライン内見と実際の物件のイメージの差を聞くと、378人のうち54.2%が「実際の方が良かった」と答えており、満足度も高いようだった。
利用者の感想では「遠方に転勤するための引っ越しなので、オンラインで内見ができて助かった」(20代女性)などと利便性が評価された。また、移動や不動産会社のスタッフとの接触がなくなり感染症リスクを抑えられるメリットが見込めるが、「これからの時代にはコロナの影響に関係なく必要」(40代男性)とする声もあった。
逆に、コンセントの位置や数など細かい部分まで見られなかったとの不満や、「匂いが分かりにくいというのが一番不便」(30代女性)、「騒音といった周りの環境が分からない」(50代男性)などの現地でしか確認できない部分を気にする意見も根強い。「オンライン内見後、実際に見に行く」(20代男性)という慎重派も少なくなかった。
MMD研究所の調査担当者は、移動の手間を省いたオンライン内見が広がることで「利用者が内見したいと思う物件の幅が広がるのでは」と、“時短”が部屋選び・物件選びに影響する可能性を示唆している。
調査はMMD研究所が6月11日から同月25日にかけて、18~69歳の男女を対象にインターネットで実施した。