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「人生ゲーム」で新作、副業やサブスクなど世相反映 コロナ禍で根強い人気

 タカラトミーはボードゲーム「人生ゲーム」シリーズから、“逆境からの大逆転”をテーマにした「大逆転人生ゲーム」を発売した。67作品目となる新作では初めて「副業」カードを導入。動画クリエイターやフードデリバリーなどが用意され、本業以外に副業からも収入を得る人生を体験できる。リモートワークやサブスクリプション(定額課金)など世相を反映したワードもマス目に取り入れた。新型コロナウイルスの影響による巣ごもり需要の拡大で販売が伸びているという。コロナ禍で根強い人気の人生ゲームの開発の裏側に迫ってみた。

 「人生!山あり谷あり」「めざすは億万長者」。子供から大人まで楽しめる人生ゲームは、米国のゲームを原型に昭和43年に発売され、累計1500万個以上販売されている。

 基本ルールは初代から変わらず、ルーレットを回して、自分を表すピンを指した自動車のコマでマス目を進めて、お金を一番集めたプレーヤーが勝ちとなる。マス目には結婚や就職、出産などのイベントがあり、まさに人生の縮図といえる。その時代のトレンドが取り入れられているのも大きな特長だ。

 タカラトミーによると、令和2年度の販売実績は巣ごもり需要の拡大で前年度比4割増。特に最初の緊急事態宣言が発令された昨年春から夏にかけて、大幅な需要増となり、品薄状態になった。生産が追いついた年末年始は前年同期比7割増を記録した。

 こうした中、同社は満を持して、新作の大逆転人生ゲームを投入した。エデュテイメント事業室マーケティング課係長の池沢圭氏は「コロナで生活様式が変わり、その点を新作に盛り込んだ」と説明する。

 人生ゲームは大きく分けて、7~8年に1回のペースでリニューアルされる定番の「スタンダード版」と時代のトレンドに合わせて、毎年販売される「テーマ版」がある。大逆転はテーマ版に属している。

 新作の開発は昨年初めにスタート。3~4人のメンバーで、まずはコンセプト作りから始めた。今回は当初、就職氷河期を反映した平成15年発売の「ブラック&ビター」やリーマン・ショック後となる21年発売の「極辛」など、辛いことばかりが起きる「辛口」と呼ばれる内容にすることが決まっていた。

 しかしその後、新型コロナが流行しメンバーから「コロナ禍で辛口は重い」との意見が出された。そこで「ゲーム序盤に辛いマス目を増やし、途中で逆転して最後は爽快に終われる案になった」(池沢氏)。ルーレットの横に一発大逆転できる歯車を設け、最後の最後まで勝敗がわからない構成にした。開発は何度もテストプレーを繰り返し、修正をかけて最適な形に仕上げていく。開発メンバーは1人で遊ぶことも少なくないという。

 53年の歴史がある人生ゲームは開発で必ず心がけていることがある。それはプレー中に戦略性を持たせないことだ。ボードゲームは戦略性を楽しむ商品が多いが、「人生ゲームはルーレットの出た目次第で勝敗が決まる。実は運に頼るゲームは市場に少ない」(同)。大人と子供が対等に遊べるのが人生ゲームの魅力でもあるのだ。

 コロナ禍で売れている背景について、池沢氏は「プレーしながら、会話が盛り上がるアナログゲームの魅力が再認識されてきた面もある」と分析する。今後の人生ゲームについて、池沢氏は「いつの時代でも家族で楽しい時間をつくるお手伝いをする存在でありたい」と語った。(黄金崎元)

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