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災害現場用自転車、西日本豪雨での教訓を元に開発へ

 消防車両が入れない災害現場で、物資などを運んで救助活動を支援する三輪自転車の試作車作りが7月から始まった。きっかけは平成30年に起きた西日本豪雨。当時、災害現場に隊員を派遣した堺市消防局が、物資の運搬にてこずった経験からベンチャー企業に開発を依頼、来年の実用化を目指している。全国の災害現場で役立ててもらいたい考えだ。(藤谷茂樹)

 3年前の西日本豪雨、堺市消防局は7月6日から8月1日にかけて広島市と広島県東広島市に延べ173人の隊員を派遣した。

 「現場は傾斜がきつく、土砂だらけ。悪路を走ることができて重い物も運べる装備があれば、もっと効率的に動けた」

 こう振り返るのは、約1週間、広島市の土砂災害現場に派遣されていた同局警防課の中川開人さん。炎天下で救助活動にあたる隊員のため飲料水を運ぶ必要があったが、倒壊した家のがれきや土砂が散乱し、車道がふさがれ、別の隊員が段ボールを抱えて歩いて運搬するしかなかった。隊員からは「人力だけでは運べる資材の量や重さは限られる。救助に役立つ物資を迅速に運べるようにならないか」という声が上がった。

 そこで消防局は「路面状況を問わず走行でき、燃料補給もいらない自転車が必要」と発案。自転車製造企業の集まる堺市が、観光振興や街づくりに自転車を活用しようと協業していたベンチャー企業「T-TRIKE」(ティートライク、東京)に開発を依頼した。同社は電動アシスト自転車などを手がけ、自転車の開発技術を持っていた。

 災害現場用に開発中の三輪自転車のサイズは全長1・8メートル、幅1メートル。段差や斜面に合わせて車輪が上下に動き、衝撃を和らげる制御機能を持たせる。荷台部分を交換すると、避難者らの搬送も可能になるという。堺市内の自転車製造関連の企業からは、部品が供給される予定だ。

 今年度、研究費として総務省消防庁の助成844万円が決まった。7月、試作車作りを始め、来年の製品化を目指す。全国の消防局や消防団に販売するだけではなく、災害時の避難に生かせるように高齢者施設などにも普及させたい考えだ。T-TRIKEの開発担当者、小野田貴啓さんは「自転車の可能性を広げる開発にしていきたい」と話す。また、堺市消防局総務課課長補佐、太田弘章さんは「人や機材があっても、運ぶ手段がなければ意味がない。あらゆる災害現場に対応できる自転車を全国で活用してほしい」と期待を込めた。

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