「国の税収が過去最高なんて、すごく意外なんですが」。短文投稿サイトのTwitter(ツイッター)では1日、さまざまな声が飛び交った。2020年度の税収が過去最高の60兆8000億円程度になる見通しであると前日に報じられたからだ。2019年10月の消費税増税の効果が税収全体を押し上げたのも理由だが、それにしても、政府の想定を5兆円超も上回る税収。コロナ禍による個人消費の落ち込みで停滞感が広がっているだけに、「この不景気で国民生活がメチャクチャなのに」と戸惑う人が少なくなかったようだ。
「投資判断は慎重に」
「昨年後半以降、製造業の回復が顕著で、業績も輸出も好調でした。コロナ禍でリモートワークが普及し、IT関連ではむしろ恩恵を被った企業も少なくなく、巣ごもり需要でホームセンターや家電量販店の売り上げも伸びています」
ニッセイ基礎研究所の准主任研究員の佐久間誠さんはこう指摘する。米国や中国の景気回復を背景に自動車などの輸出が伸びているという。政府はコロナ禍で企業業績や個人消費が低迷していることを受け、昨年12月時点で税収は55兆1250億円と予想していた。SNSでは「国民からしぼり取り過ぎでは」といった不満も漏れるが、消費税増税の効果は政府も織り込み済みのはず。佐久間さんは「政府の予想よりも多くなったのは、やはり法人税の税収が想定を大幅に上回ったからといえます」と分析している。
コロナ禍の影響を受けた分野は限定的で、飲食業や旅行業などが大きな打撃を受ける一方、グローバルで活躍している企業では業績の回復傾向が続いているようだ。足元の経済が厳しさを増す中での過去最高の税収。「日本国内だけ見ていると海外の動向は見えない」(佐久間さん)のかもしれない。実際、2020年の国内総生産(GDP)はコロナ禍の影響でマイナス成長に転じたが、10~12月期は2四半期連続でプラス成長になっている。
総務省がまとめた家計調査(2人以上の勤労者世帯)では、一律10万円の特別定額給付金の支給で可処分所得が前年度比4.0%増えたのに対し、外出自粛の影響で消費支出は4.7%減った。コロナ禍の財政支援や消費抑制で家計が蓄えた貯蓄は20兆円超に上るとされる。
東京株式市場の日経平均株価は一時3万円の大台を超え、バブル期以来、約30年半ぶりの高値を記録した。都心のマンション価格も右肩上がりが続く。各国の巨額の財政出動と金融緩和によって、だぶついた資金が株や不動産などに集中しているとみられるが、市場の過熱感を不安視する向きも。佐久間さんは「反動のリスクはもちろんあります」としたうえで、「財政や金融政策によるこれ以上の後押しは期待できず、株価がどんどん上がっていくといえる状況ではないので、投資判断は慎重に見極めるべきでしょう」とみている。