青少年をインターネットの会員制交流サイト(SNS)上でのトラブルから守るため、東京都都民安全推進本部は7月26日から、SNS使用時に注意すべきことを若者自らがまとめた動画・画像を募る「SNSトラブル防止動画コンテスト」を開催する。若年層がSNSの使い方を見つめ直す契機とし、作品を活用した広報活動を通して「青少年を被害から守る」という機運を醸成していく。
若者の意識啓発を目指す
コンテストで募集されるのは、「SNSを使うときに気を付けたいこと」をテーマとした15秒、30秒の動画と画像作品。若者の作品制作を通じた「意識啓発」も目的としているため、応募資格は都内在住・在学・在職の13~29歳に限定される。
昨年開催されたコンテストで最優秀賞に選ばれたのは、都内の工業高校に通う生徒の作品だった。「動物園からライオンが脱走したらしいよ!」という書き込みが400万回見られたり、「マスクが品薄」「サバ缶が売り切れ」などの書き込みが拡散されたりする様子が描かれ、最後にブラックアウトした画面の中央に「その情報、正しいですか?」という文字が表示される。SNSに書き込まれた情報の信憑(しんぴょう)性を問いかける内容は、コロナ禍に巻き起こったSNS上での情報拡散をきっかけにトイレットペーパーなどが品切れになる「買い溜め問題」を想起させ、若者だけでなく中高年に対しても気づきを与える内容だ。
1日あたり約5人の少年少女が被害に
近年、SNS上で若者が犯罪に巻き込まれるケースは後を絶たない。警察庁の発表では、2020年の1年間にSNSをきっかけとして犯罪に巻き込まれた18歳未満の子供は1820人に上る。全体の被害者数は前年から262人減少したが、1日あたり約5人の少年少女が犯罪に巻き込まれている計算で、SNSに起因する犯罪から青少年を守ることは社会的な課題ともいえる。
利用したSNSは全体の3分の1にあたる642人が短文投稿サイト「ツイッター」だったが、前年の807人からは165人減少。一方、写真共有SNSの「インスタグラム」が221人と前年の120人からほぼ倍増した。ツイッターと違い、インスタグラムではお互いがフォローをしていなくてもダイレクトメッセージ(DM)を送り合うことができるため、身元や属性の分からない人物とも容易にやりとりができ、危険人物と知らずにつながってしまうケースも考えられる。
SNSの利用には年齢制限がある場合が多いが、その事実は今の親世代には十分に広がっていないのが現状だ。
東京都が都内在住の保護者2000人を対象としたアンケート調査では、約4割の親がSNSの利用に年齢制限があることを「知らなかった」と回答。昨今の子供たちは「デジタルネイティブ」と呼ばれる世代だが、そこに潜む危険性までは把握しきれていないこともある。子供たちが巻き込まれる事件について、親もリテラシーを高めるとともに知識を身に着け、被害を未然に防ぐための対策を講じることが求められる。
今年度の募集期間は11月24日まで。最優秀賞に輝いた人には副賞としてアマゾンギフト券10万円相当が贈られる。若年層を主な対象としたものだが、動画や画像を通じて親子で一緒にSNSの危険性を学ぶ機会にもなりそうだ。