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東京ガスなど6社、オリパラ後見据え選手村を水素活用モデルに

 東京五輪・パラリンピック後を見据え、東京・晴海の選手村地区を次世代エネルギーとして期待される水素を活用するモデルケースにしようとする計画が進んでいる。東京ガスなど6社が参画し、実用段階では国内初となるパイプラインを使った市街地への水素供給を2023年度下半期にも始めたいとしている。

 6社は東ガスを中核とする。大会後に選手村地区で、パイプラインを使った市街地への水素供給を手掛けるのに加え、水素ステーションで燃料電池車(FCV)への水素の補充も行う。

 市街地に水素を供給するためのパイプラインなどの計画や運営は東ガスの子会社「晴海エコエネルギー」が担い、水素ステーションは石油元売り国内最大手のENEOS(エネオス)が運営する。水素と空気中の酸素を反応させて発電する燃料電池を大会後に5カ所設置し、市街地の建物の共用部に当たる出入口や外構の照明などに電気を供給する計画だ。

 水素は、エネオスの水素ステーションの敷地内で製造。市街地に送り出すために地中に埋設するパイプラインは延長約1キロで、このうち約700メートル分は2019年度までに工事が終わっており、残る約300メートル分は22年度を中心に埋設する。工場や商業ビル向けの都市ガスの供給で用いられる鋼管を採用し、東ガスが都市ガス事業で培ったノウハウを生かす。

 選手村地区は世界各国・地域の選手らが大会期間中に拠点とし、7月13日に開村する。大会後には、全5632戸の分譲・賃貸住宅になる予定で、商業棟として使用する建物などもある。

 水素はさまざまなエネルギー源から製造可能で、使用時に二酸化炭素(CO2)を排出しないという特徴があり、脱炭素社会の実現に向けて期待が高まっている。一方、本格的な普及には輸送や貯蔵などのインフラ整備に加え、既存のエネルギー源と比べて製造や調達コストが高いなどの課題が指摘される。

 政府は、菅義偉首相が宣言した50年のカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量実質ゼロ)の実現に向けた「グリーン成長戦略」の中で、水素の活用を重点分野に掲げており、30年に最大300万トン、50年に2000万トン程度の導入量を目指す。

 脱炭素社会の実現に向けた水素活用の先駆けとなるか。東ガスの福地文彦エネルギー企画部課長は「水素はとても注目されており、将来の水素のエネルギー利用に貢献したい」と話す。(森田晶宏)

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